宝塚歌劇団を退団した、元星組の男役スター・天華えまさんにインタビュー。豊かな表現力と細やかな役作りに加え、大胆な一面も魅力的な天華さん。退団を決めた理由や、知られざる素顔に迫った。
●表現することは一生続けていきたい
——今年4月、惜しまれながら宝塚歌劇団を退団した天華さん。いつ頃から退団を意識していたのでしょうか。
「入団した時から『いつかは退団する』という覚悟は持っていましたが、『男役10年』という言葉があるように、まずは10年やろうと。ただ、退団後の夢もあり、いつそれに向かって行こうかと思う中で、節目でもある10年で退団をと考えていましたが、コロナ禍など様々な事情が重なり、入団12年で退団となりました」
——退団後の夢を教えてください。
「映像のお芝居をしてみたいというのが昔からの夢です。宝塚で培ってきたものも自分の一部なので、それが発揮できたらいいなと思っています。小さい頃から舞台に立つことが大好きなので、何かを表現することは一生続けていきたいです」
——3歳から始めたバレエの影響でお芝居を好きになったそうですね。セリフ・歌・ダンス全てをこなさなければいけないミュージカルは、どのように覚えているのでしょうか。
「全て同時です。『この動きの時にこの歌詞が来るな』とか、『この動きの時にブレスをするな』という感じで覚えた方が体に入りますし、立ち稽古をした後の方がセリフも入ります」
——役作りはどのようにしていますか?
「役作りは自分ではない人格を作り出さなければいけないので、いろいろなものが削れていく感覚があります。お稽古中は体重も落ちていくので、自分の中から捻出していく感覚ですね」
●私の人生のスピードってこれくらいなんです(笑)
——宝塚歌劇団でターニングポイントになったのはどの役でしょうか。
「お役の一つ一つが自分にとって大きなものだったと改めて思います。その中でも、『桜華に舞え -SAMURAI The FINAL』(2016年)、『THE SCARLET PIMPERNEL』(2017年)、『ANOTHER WORLD』(2018年)と新人公演の主演を3回務めさせていただけたことは、自分にとって大きな意味がありました」
——3回の新人公演にはどんな思い出がありますか?
『桜華に舞え -SAMURAI The FINAL』はとてつもなく殺陣をする、『THE SCARLET PIMPERNEL』はとてつもなく歌う、『ANOTHER WORLD』はとてつもなく喋る…と盛りだくさんな内容だったので、先生方に育てていただいたのはもちろん、当時のトップスターの皆さんにも大変お世話になりました。
2番手役をさせていただいた時、礼真琴さん(現・星組トップスター)にも、本当にお世話になりました。琴さん(礼さん)とは長い間ご一緒させていただき、私の宝塚人生において大きな存在です」
——「Stella Voice」(2023年)では座長を務め、後輩をまとめ上げる立場に。振り返ってみていかがですか?
「上級生への尊敬がより増しましたし、下級生に頼もしさを感じました。社会では、物事を円滑に進めるために自分の何かを抑えなければいけないことがあると思いますが、やはりお互いが気を遣い合わないと上下関係は成立しないなと。どちらかが我慢しすぎても良くないし、我慢しなさすぎてもいけない。そういったことに気をつけて、自分の成長にもつながりました」
——具体的には、どんな部分に気をつけたのでしょう。
「下級生に『分からないことがあったら積極的に聞いてほしい』と伝え、とにかく明るく接することを心がけました。楽屋でも笑顔で空気を作って、みんなが意見を言いやすい環境を作るために、自分ができることを最大限していました。
下級生が自主稽古をしている時に気になるところがあっても、あえて見守り、次に見た時に直っていなかったら言うようにしていました。締めるところはしっかり締める必要もあるので、そのバランスも意識していましたね」
——プライベートについても聞かせてください。よくお料理をされるそうですね。
「たくさん作り置きをするタイプで、先日も作り置きしておいたナスの揚げ浸しと玉子、ミョウガ、さっとゆでたレタスをのせたお蕎麦を作りました。蕎麦にレタスって意外と合うんですよ。そばつゆも市販のものより自分で作る方が好きで、『茅乃舎』のだしと調味料を合わせて作ります」
「母が調理士免許を持っていて、いつもおいしい料理を作ってくれていたので、自分も作るのが当たり前という感覚があります。外食が多いと体調を崩してしまうので、基本的に自炊が好きです」
——最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
「私は本当にこのお仕事が大好きで、皆さんと生きがいを共有できることに幸せを感じています。退団してからの展開がとても早かったのですが、決してファンの皆さんを置いてきぼりにしているわけではなく、私の人生のスピードってこれくらいなんです(笑)。
公式ファンクラブも設立させていただいたので、皆様のところに新しい私をお届けできればと思います。これからも応援していただけるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします」
【天華えま プロフィール】
滋賀県出身。2012年に宝塚歌劇団に入団し、宙組公演「華やかなりし日々/クライマックス」で初舞台。星組に配属され、2016年「桜華に舞え」新人公演で初主演。その後、三度にわたって新人公演主演を務める。在団中は「Stella Voice」、「ロミオとジュリエット」、「1789」、「ME AND MY GIRL」などに出演。2024年、「RRR×TAKA”R”AZUKA〜√Bheem〜/VIOLETOPIA」をもって退団し、8月に退団後初のディナーショー「華」を開催。
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