電気を使わない炊飯器「魔法のかまどごはん」はキャンプや災害時に大活躍!開発のワケを「タイガー魔法瓶」に聞いた
強い火力と大量の泡立ちでお米のうまみを引き出す「タイガー魔法瓶」の「土鍋ご泡火炊き」。「毎日食べるごはんがとてもおいしくなった」「やっぱり土鍋は違う!」など、口コミでも高く評価され、大ヒット商品に。
創業100年を迎えた「タイガー魔法瓶」
この炊飯器を手掛ける「タイガー魔法瓶」は、2023年、創業100周年を迎えた。
第1号商品は1923年に発売した魔法瓶だったが、その後は魔法瓶の技術を生かし、ごはんの保温ジャーを発売。時代の流れに合わせて次々と新たな商品を開発し、炊飯器業界で大きな存在感を示してきた。
しかし、2000年代に入ると、炊飯器業界に大きな波が。
「いかにおいしく炊くか、各メーカーが特徴を出し始め、高級炊飯器の戦国時代に突入した。今のまま何もしないと炊飯メーカーとしてどんどん落ちていってしまう。なんとか新しいものにチャレンジしたい…どうやったらおいしいごはんが炊けるかを追求した時、我々の頭に浮かんだのが料亭で使われている土鍋ごはんだった。あの“フタを開けた時の感動”を炊飯器で再現したいと思った」(「タイガー魔法瓶」商品企画チーム 辻本篤史さん)。
タイガーは他社との差別化を図るため、2006年、業界で初めて土鍋を使った炊飯器を発売。これが大ヒットとなり、高級炊飯器部門の売り上げは前年の約20倍、20億円以上に達した。だがその開発は、一筋縄ではいかなかった。
「土鍋を入れるには寸法精度が大事になってくる。いろんな窯元を回ったが、精度の高いものは難しかった」と辻本さん。そんな中、一緒に協力してくれたのが「ミヤオカンパニーリミテド」(三重県四日市市)だった。
“伸縮性のある発熱体”を独自に開発
当時、土鍋の開発を担当した「ミヤオカンパニーリミテド」の阿部志津恵さんは、「サイズコントロールが難しいだろうと(社内でも反対の声が多く上がったが)、やってみないと進まないので、挑戦してみようと思った。試作品は1万を超えると思う」と笑顔で話す。
材料の配合や窯の温度など試行錯誤しながら、なんとか寸法の精度を高めることができた。しかし阿部さんに、さらなる難題が降りかかる。
「タイガーさんは全体的にごはんを炊きたいということだったので、曲面に発熱体をつけるのが一番難しかった。平面のものを曲面に伸ばして貼らないといけない。どうしても切れたりシワになったりする。塗料・樹脂・貼りつける条件・温度など試行錯誤した」(阿部さん)。
炊飯器本体から出る熱を土鍋に伝えるための発熱体。これを曲面にキレイに貼りつけるのは、至難の業だった。阿部さんは、金属や樹脂の配合など調整を繰り返し、“伸縮性のある発熱体”を独自に開発。ただ、この発熱体を曲面にピッタリ貼りつける作業は、限られた人にしかできない。
激撮!土鍋炊飯器 選ばれし“貼り師”
発熱体を土鍋に貼ることができるのは、工場で働く約80人の内、たったの4人。選ばれし“貼り師”たちが、一つ一つ手作業で行っている。
土鍋の曲面にどうやって貼るのか…。貼り師の1人、水谷さんは、土鍋を回しながら小刻みに位置を調整。細かいシワをヘラで整えると、高速回転! 見事な手さばきでシワなくキレイに貼りつけることができた。試しに番組スタッフが挑戦すると、あらゆるところにシワが…まさに選ばれし者たちの領域なのだ。
電気やガスを使わない!野外でもおいしいごはん
さまざまなこだわりと職人の技術が詰まった土鍋炊飯器。「タイガー魔法瓶」は土鍋づくりの技術を生かして、新たな炊飯器を開発していた。
それがこちらの「魔法のかまどごはん」。「ミヤオカンパニーリミテド」の工場で作っていたのは、土鍋ではなく“かまど”で、下の穴から新聞紙を入れ、火をつける仕組みになっている。米と水と新聞紙があれば、おいしいごはんが炊けるのだ。
丸めた新聞紙を穴に入れ、火をつけて約30分…一定間隔で新聞紙を入れていくと、お米の粒立ちの良いおいしそうなごはんが炊けた。
電気もガスもいらないため、野外でおいしいごはんが味わえると大人気! アウトドアだけでなく、万が一の時にも役立つ商品だ。
「災害時は前向きになれないこともあると思う。食事を1つの楽しみとして、この商品でホッとする時間を提供できたらという風に思っている」(「タイガー魔法瓶」開発担当 村田勝則さん)。
日本人の食に欠かすことが出来ない「ごはん」。うまさへの追求は今後も続いていくだろう。
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