美浜町の上野間(かみのま)地区では、お正月に特別な参拝が行われます。その名も「裸まいり」。江戸時代から続く伝統行事で、年明けの真夜中、厄を払うために裸で海へ飛び込むという伝統行事です。
時代の変化とともに参加者が減少するなか、それでも受け継ぎたいと奮い立つ上野間の人々の姿を追いました。
上野間の新年は、寒さも厄も吹き飛ばす「裸まいり」から
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「同級生と裸まいりを迎えられてうれしい」と話す一樹さん
2025年の厄年を迎えたのは、トラックドライバーの一樹(かずき)さんをはじめとする4人。地元では厄男のことを「厄歳(やくさい)」と呼び、地域全体で支え合いながら厄を祓います。
そんな厄歳の“身代わり”として厄を落とすのが、16歳から22歳の若者たち。寒い海に裸で飛び込むという独特なしきたりなのです。
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今年が最後と若干安堵している様子の太蔵さん
しかし参加者は年々減少し、20年前には20人以上いた裸まいりの挑戦者も、今ではたったの数人に。それでも伝統的な祭りを「続けないかん」との熱い思いで、今なお守り続けています。
今年は7人の若者が裸まいりに挑戦。リーダーを務めるのは、今年最後の参加となる22歳の大蔵(たいぞう)さんです。
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海に飛び込む若衆のために、厄歳ができることは進んで行う
「おれらのためにやってくれるから、ぜいたく聞いてあげないと」。体を張る若衆のために、厄歳たちは自費で準備を進めます。寒い体を暖めてもらいたいと、特設風呂を設置したり、宴会場を整えたり。若衆が身を清める浜を清掃するなど、厄歳の奥さまたちも総出でサポートに回ります。
大みそかの夜、厄を祓う“伝統”が始まる
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裸まいり前には、参加者がそろって年末のひとときを満喫
午後8時、気温5度の極寒の中、裸まいりに挑む7人の若者たち。奥さまたちは台所で干物や寿司を準備し、年越しそばも振る舞われます。
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極寒の冬の海に思わず一言「ヤバいっす」
そしていよいよ、本番の瞬間が訪れます。
海で身を清めたあと、7箇所の神社仏閣を3時間かけて巡ります。真冬の海にふんどし姿で飛び込む若衆。寒さに震えながらも、伊勢音頭の大合唱で士気を高めていくその姿は、圧巻の一言です。
仲間と共に乗り越えた3時間 胸に刻まれた絆と誇り
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3時間にもわたって、真冬の早朝から7箇所の神社仏閣を巡る
一方、厄歳たちは、若衆の無事をただひたすら祈るのみ! 眠気と戦いながらも、リーダーの大蔵さんを中心に励まし合い、なんとか神社仏閣めぐりが完了。裸まいりは無事終了しました。
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裸まいりを通じて、若衆もみんな結束! これが祭りの醍醐味
3時間にわたる過酷な儀式を終えた7人の表情には、達成感と誇りがにじみます。ラストイヤーを迎えた大蔵さんの目には涙が光り、伝統を守ることの重みを改めて実感した様子でした。
裸まいりは厄歳にとっても、若衆にとっても一生忘れられない時間。熱き絆を胸に、この古き良き伝統が今後も続いていくことを願っています。
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