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日本家屋をミニチュアで再現
年々見かける機会を減らす、古き良き日本家屋を模型で再現する「古民家模型」の世界を紹介。精巧な仕上がりとともに、古民家に刻まれた長年の“歴史”を再現する巧みな工夫にも注目です。
目次
古き良き伝統を形作る古民家模型
古民家模型の達人郡田さんによる築500年の古民家を再現した作品。全体の形状や質感だけでなく、水車が駆動し臼をつく構造まで作られています。
庭にはミニチュアの農耕器具を設置。米作りと餅をつくるための道具を一式製作しています。昔ながらの農家の伝統的な暮らしを形にして残したいという思いが込められており、そのために再現性の高い仕上げが徹底されています。
まずは瓦屋根作り
製作途中の日本家屋。柱や梁、内装などがほぼ完成したので、屋根を製作します。その工程を見せてもらいました。
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作るのは瓦屋根。自作した型に紙粘土を押し付け量産
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乾燥させたら適当な大きさにカットし設置
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立派な瓦屋根が完成。ここに塗装を施し雰囲気よく仕上げる
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アクリル絵の具を塗り重ねて色を再現
使うのはアクリル絵の具。塗り重ねて色を再現していきます。塗りムラができるのはむしろ好都合で、瓦ごとに異なる経年変化具合の表現につながります。
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濃い色を塗り重ねる
メインの色が塗装できたら濃い色を塗り重ねていきます。このときも、あえて塗りムラを作ることで自然な質感になりやすいです。
さらに、塗料が完全に乾く前にうっすら表面を布などで擦ります。
完全に乾くと、擦った部分に白い筋のような跡が残り経年変化具合が高まります。
さらに年季を出す表現方法
用意するのはジオラマ製作に使う緑色のスポンジや粉。これで屋根に生えるコケを表現し、さらに年季の入った雰囲気に仕立てていきます。
水で溶いた接着剤をコケを生やしたい場所に塗布。多種多様なコケが生えていることを想定して、さまざまな色の材料を接着剤を塗布した部分を中心に振りかけます。
方角によってコケの生え方が違うという実際の習性を加味して、屋根ごとにコケ表現を変えるのがコツ。
長年、使い込んだ鎌に加工
瓦屋根が完成したあとは、農耕器具の鎌を作ります。取り出したのはスチール製の空き缶。まずは金属用のハサミでカットします。使用感のある鎌にするため、カットしたものをバーナーで炙り、ムラのある“刃”に。わざとムラができた部分を切り出します。
鎌の形にカットした部分をヤスリなどで整えると、使い込まれた雰囲気の鎌になりました。柄の部分は爪楊枝をカットしたもの。鎌の刃の部分と接続します。
柄にもエイジング表現を施し、刃をとめるための金属パーツを取り付ければ完成。バーナーによるムラが使い込まれた鎌に見られるサビ表現になっています。
囲炉裏にかかった土瓶づくりへ
囲炉裏でよく見られる自在鉤に掛かる土瓶を再現し、まるで日本家屋で暮らしているかのような臨場感を高めます。
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自作した土瓶用の型を用意し、紙粘土を押し付ける
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自作したパーツを紙ヤスリで整形
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形を整えたものに取っ手などのパーツを取り付ければいったん完成。ここから囲炉裏で燻された姿へと仕上げる
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使うのは線香。束ねて火をつけ、煙がでているところにパーツを当てる。塗装表現よりもリアルな仕上がりを期待した工程
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囲炉裏で長年使い込まれたような自然な焼け色に
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使った線香もむだにはせず、囲炉裏の灰へと再利用。土瓶だけでなく、囲炉裏の上にもすすが付くので、ろうそくを使って囲炉裏上部の梁にすす表現を追加します。
こうして完成した昭和初期の日本家屋。庭には使い込まれた雰囲気に仕上げられた農耕器具がズラリ。古き良き風合いだけでなく、生活感も感じられるリアルテイストに仕上げられています。古民家模型だけでなく、プラモデルを使ったジオラマや鉄道模型のレイアウトにも活用できる表現方法です。経年変化表現にぜひ試してみてください。
※この記事の掲載内容は更新当時の情報です。
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