耐久性に優れ、使い込むことで起こる経年変化でその魅力が高まる革製品。そんな革製品を手作りし、既製品では決して出会うことのできない魅力が詰まったものへと仕上げる「レザークラフト」の世界を紹介します。
レザークラフトの魅力
レザークラフトとは、自分で革の種類を選び、設計図のもとに自作する趣味のこと。作る楽しさとともに、既製品にはない人とは違う“一点もの”を手にできる喜びもあります。
達人が初めて作ったコインケース。今見るとところどころに粗が見られますが、夢中で作った思い出の作品だそう。
お気に入りの服にぴったり合わせたサイズの財布も作れる
財布は20点以上制作。たくさん作ったのは、お気に入りのジーンズと組み合わせたときにイメージに合ったものが欲しかったから。これは落ちにくいけど取り出しやすく、ちらっと革の色合いが見える絶妙なサイズ感に仕上げられています。
作った財布はいずれも収納したときの見え方に変化を付けていて、1つとして同じものがありません。もちろん財布としての使いやすさも考慮したものになっています。
-
イメージイラスト
現在はデジカメ、財布、スマートフォンが無駄なく収納できるウエストバッグを作ることを計画中。ウエストバッグをベルトに通せるように工夫して、使い勝手を良くするのがコンセプトです。
革を選びに専門店へ
世界各国の革を取り扱っていて、実際に手触りも試せる専門店へ行き、使用する革を選びます。
-
栃木レザー
目に止まったのは栃木レザー。革製品が好きな人であれば一度は見聞きしたことがある逸品です。職人の手によって細かい工程を重ねたなめし方によって、しなやかで耐久性のある革に仕上がっており、使い込んだときの経年変化にも定評があります。
-
栃木レザーの製作過程
ウエストバッグ制作
今回は、栃木レザーの藍色のものを選びました。
作った型紙を革に当てて、カットするアタリを付けていきます。
専用のカッターを使ってアタリの線に沿ってカット。革の切りごこちは独特の気持ちよさがあり、革の種類によっても変化があるそうです。
-
赤い線の部分のマチを作る
今回のウエストポーチのポイントはマチの部分。厚みの違う財布、デジカメ、スマートフォンに対応できるように、蛇腹の形状を取り入れていきます。
マチにする革に水を染み込ませていきます。一般的に革製品に水は厳禁と思われがちですが、硬い革を一度柔らかくするには水を使うのが効果的。均等に塗らせば、乾かしたときにシミにはならないそう。
革が水で濡れている間に折り曲げればマチの完成。乾けばこの形で固まってくれます。
-
違う道具を使って穴を開ける
そのままでは手縫いできないので、専用工具であらかじめ糸を通す穴を空けておきます。革の厚みや形状によって穴を開ける道具も使い分けます。
穴を開け終わったら縫い合わせます。特別なミシンなどがなくても手縫いで行えますし、むしろ達人は手縫いにこだわっています。それは手縫いのほうが手作り品として愛情がよりこもりやすいと感じるからだそう。
縫い終わっても完成ではありません。ここから仕上げの作業に5時間以上はかかるといいます。
-
革の切り口「コバ」をきれいにする
仕上がりに大きく影響する「コバ」と呼ばれる革の切り口をきれいにする処理を行います。
-
スリッカーを使ってコバを磨く
スリッカーと呼ばれる専門道具を使って、コバの部分を丹念に磨いていきます。半日掛けて磨き上げることで、少しずつ美しい仕上がりに。これを目の当たりにする時間こそ、至福のひとときなんです。
世界に1つだけのウエストバッグの完成
-
完成したウエストバッグ
こうして出来上がったウエストバッグは、手作りとは思えないほどの完成度です。長財布もしっかり収納できる工夫も盛り込まれていて、スマートフォンはフタの外側のポケットに収納! サイズもぴったりです。
-
上の部分だけ取り外せる工夫も
本当の完成はさらにその先。実際に使い込んで経年変化が加わってからだと達人は語ります。それは既製品でも同じで、革製品を楽しむ醍醐味の1つです。ウエストバッグはサイズも構造も複雑で上級者向けですが、達人が初心者時代に作ったコインケースなどの小物入れは挑戦しやすいです。
レザークラフトで世界に1つだけのアイテム制作に勤しんでみてはいかがでしょうか。
この記事の番組を動画配信で観る
この記事をシェアする