配管&シャフトなど「車の機能」にこだわり抜いたプラモデル!元自動車設計者の作品に込められた想いに迫る<半田モデラーミーティング>

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  • こだわりの一部

    こだわりの一部

愛知県半田市で開催された模型愛好家たちが集う「半田モデラーミーティング」。会場で、異彩を放つ一人のモデラー・目黒一久さんがいました。目黒さんの作品は、一見すると美しい模型だが、細部を覗き込むと模型という言葉の枠組みを超えた、圧倒的な情報の濁流に飲み込まれます。

市販のキットをベースにしながらも、主要な配管やシャフトを金属部品へ置き換え、キットに存在しないパーツをゼロから自作しているのです。

そこにあるのは、単なる精密さへの執着ではない。元自動車設計者というキャリアを持つ彼だからこそ到達できる、実車に対する深い洞察と、かつての設計者たちに向けられた共感という名の哲学がありました。

エンジニアの直感「こうでなきゃ、動かない」で埋める、メーカーの空白

  • リアリティあるパーツ

    リアリティあるパーツ

――目黒さんの作品を拝見すると、目に見えるすべての配管やワイヤーに意味を感じます。制作における根本的なコンセプトを教えていただけますか。

「私の制作スタイルを一言で言えば、キットという素材に、リアリティの命を吹き込む作業でしょうか。市販のプラモデルキットは非常に優れた工業製品ですが、どうしても作りやすさやコストの都合で、実車の構造が簡略化、あるいはデフォルメされてしまいます 。私は、そのメーカーがオミット(省略)してしまった空白を、実車と同じパーツを追加することで埋めていくんです 。

特にこだわっているのが、パイピング類やシャフト類です。これらは基本的にすべて金属部品に置き換えます 。なぜなら、プラスチックの質感では表現しきれない重みや機能の連続性がそこにあるからです」

――単に細かくするのではなく、金属に置き換えることに意味があると。

「私はかつて、某自動車メーカーで設計の仕事に携わっていました 。内部構造はもちろん、強度の設計についても一通り学んできました 。その経験があるからこそ、キットのパーツを見た時に違和感を覚えてしまうんです。『このままでは、この車は機能的に動かないはずだ』と。

例えば、このエア配管一本にしても、実際にはどこから空気が入り、どこへ抜けていくのか。その論理的な繋がりが模型の中で途切れているのが耐えられない。だから資料を徹底的に調べ、自分なりに寸法を割り出し、実車にあるものはすべて再現する 。それが私のこだわりであり、一種の職業病かもしれませんね」

ブガッティのエンジンルームに刻まれた、先人たちの「苦悩」への共感

  • 目黒さんの展示

    目黒さんの展示

――今回展示されているブガッティは、まさにその哲学が凝縮されていますね。

「ブガッティのような時代の車は、現代の車とは異なり、一つ一つのパーツが職人の手によって作られた工芸品のような美しさを持っています 。しかし、その美しさの正体は、決して装飾ではありません。200キロを超える速度で走らせるために、当時の設計者が知恵を絞り、試行錯誤を繰り返した結果として生まれた機能美なんです」

――「機能美」という言葉はよく聞きますが、目黒さんはそれをどう解釈されていますか?

「設計者のこだわりと苦労の跡ですね 。特にブガッティのエンジンルームを覗いてみてください。限られたスペースの中に、巨大なパワーを生むための部品がぎっしりと、しかし整然と押し込められている 。これを設計した人間が、どれほどのプレッシャーの中で、どれほど苦心して配置を決めたのか。私自身も設計者だったからこそ、その大変さが肌感覚でわかるんです 。

模型を作る過程で、自作した細かなパーツをそのエンジンルームに収めていく時、私は数十年前の設計者と対話しているような感覚になります。『ああ、ここはこうせざるを得なかったんだな』『ここでこの強度を持たせるために、この形にしたのか』とか。その思いに共感し、自分も同じ苦労を味わいながら形にしていく 。そうして出来上がったものには、単なる「形」以上の何かが宿ると信じています。

「見えない場所」にこそ宿る、機械としての矜持

  • トラック

    トラック

――新作として制作中のイベコ・ハイウェイ(アバルト仕様)についても伺いたいのですが、なぜ今、あえて巨大なトラックを選ばれたのでしょうか。

「乗用車の模型作りを続けていく中で、次第により複雑で、より剥き出しのメカニズムに惹かれるようになりました 。トラックは、シャシーやエンジン、各種の制御機構が外部から丸見えになります 。普通の乗用車のプラモデルでは、ボディを被せてしまえば床下やシャシーはほとんど見えなくなり、メーカーもそこを省略してしまいますが、トラックはそこが主役なんです」

  • トラックの一部

    トラックの一部

――あえて見えにくい場所、本来なら省略される場所に光を当てているのですね。

「トラックのキットも、非常に作りがいがあります。実はこのキット、そのままでは各パーツの位置関係が曖昧で、適当に組むと最後には形にならないという難しさがあるんです 。エンジンをエンジンとして、シャシーをシャシーとして独立して完成させてから合わせようとしても、絶対に合わない 。

だから、常に全体の整合性を見ながら、ミリ単位で位置を調整し、パーツをあるべき場所へ導いてあげる必要があります 。これはもう、模型制作というよりは、小さな工場で実際にトラックを一台組み上げているような感覚ですね 。非常に苦労はしますが、その重物がぎっしりと詰まっていく感覚こそが、私にとっての最大の楽しみなんです」

目黒さんの言葉の端々からは、長年設計という戦場で戦ってきたプロフェッショナルの誇りと、実車への深い敬意が溢れ出していました。彼にとって模型とは、単なるホビーではなく、先人たちが築き上げた技術文明への、最も誠実な「返答」なのかもしれません。

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