【神業】ガンプラをアラレちゃんに!?鳥山明の世界をジオラマで完全再現する立体映画監督の妄想力が天才的すぎる<ぼくらのちいさな作品展>

極上ライフ おとなの秘密基地

  • 三島厚司(レオ)さんの作品

    三島厚司(レオ)さんの作品

プラモデルやジオラマと聞くと、「マニア向けの世界でしょ?」と思う方も多いかもしれません。しかし、今回ご紹介するモデラー・三島厚司(レオ)さんの作品は、模型に全く興味がない人ほど「一本取られた!」と鳥肌が立ってしまう仕掛けに満ちています。

5人の兵士を10人にする数式の謎、主役をあえて作らない狂気のこだわり……。まるで1シーンだけの3D映画を観ているような、大人の遊び心溢れる世界へご案内します。

「銃」と「自由」と「10」。ミリタリーに興味がない人も唸るトリプルミーニングの罠

  • スティルレイクサーフェス(静かな湖面)

    スティルレイクサーフェス(静かな湖面)

「ミリタリー物ってそんなに特別興味があるわけではないんです。こういう世界観やイメージを表現したいと思ったとき、一番適したモチーフがこれだったんですよね」

そう語る三島さんの机の上で、ひときわ異彩を放っていたのが『スティルレイクサーフェス(静かな湖面)』という小さなビネット(小規模なジオラマ)です 。

――水面が鏡のようになっていて美しいですね。なぜこのシチュエーションを?

「元々は三重のコンテストに出した作品で、その時のテーマが『10』だったんです 。僕は昔から雨上がりの水たまりに景色が写る、あの『もう一つの世界ができるイメージ』が大好きで 。模型でそれを表現しようと思ったとき、『水面に写して10人にしたら面白いんじゃないか』と思いついたんです」

  • スティルレイクサーフェス(静かな湖面)

    スティルレイクサーフェス(静かな湖面)

並んでいる兵士のフィギュアは5人。しかし、アクリルで作られた静かな湖面に見事な逆さ富士ならぬ逆さ兵士が映り込み、目の前でカチリと10人の数式が完成します 。さらに、驚くべきは彼が作品に込めたメッセージです。

「5人の若き兵士たちが、みんな銃(じゅう)を持っている 。彼らは『自由(じゅう)』を信じて戦っているわけです 。銃と自由、そして水面に映った10(じゅう)。一瞬だけ水面の中で戦友を得て10人になるという、ある種のネタ的な仕掛けなんですけどね(笑)」

ミリタリーに興味がない人でも、この美しい仕掛けと「じゅう」のトリプルミーニングを聞けば、思わず「一本取られた!」と唸ってしまうはずです。

あえて主役の人間を作らない!?白いペンキの足跡だけで物語を妄想させる引き算の美学

  • コーヒーブレイク

    コーヒーブレイク

――こちらの近未来ロボット(ボトムズ)の作品も、アニメを知らなくてもどこか哀愁があって素敵ですね。

「これは『コーヒーブレイク』という作品です 。ロボットの足元にペンキがこぼれていて、そこからトコトコと足跡が伸びているでしょう ?『あーあ、ペンキこぼしちゃったよ、もう休憩にしようぜ』って、人間が歩いて行った跡なんです」

驚くべきことに、このジオラマには主役であるはずの「人間のフィギュア」が1人もいません。あるのは、白いペンキの足跡だけ。

  • コーヒーブレイク

    コーヒーブレイク

「あえて人形を置かないことで、そこにいた人の気配を感じさせたいんです 。『この先、人はどっちに行ったんだろう?』って、見る人がその先を想像できたらいいなと思って。この小さな世界の外側を想像させるのが、ジオラマの本当の楽しさだと思うんですよね」

あえて作らないことで、見る人の脳内に物語を完成させる。まさに引き算の美学が光る大人の遊び心です。

ガンプラを改造してアラレちゃんに!?鳥山明の1コマを3D映画化する圧倒的妄想力

  • フレンズ

    フレンズ

三島さんの手にかかれば、どんなプラモデルも独自のストーリーをまとい始めます。

たとえば、海藻が揺らめく海の中を切り取った『フレンズ』というボックスジオラマ作品。

「ネットで見た、深い海の中から太陽の光を見上げる画像が綺麗で、それを電飾で表現したかったんです」と語るその水中世界には、オリジナルカラーのロボット(ウィーゴ)が潜り、偶然出会ったラッコと心が通じ合う、優しく温かい1シーンが閉じ込められています。

  • アドベンチャージャーニー(冒険の旅)

    アドベンチャージャーニー(冒険の旅)

さらにその隣では、どこか見覚えのある博士と少女の姿が。名作アニメの世界をリミックスした『アドベンチャージャーニー(冒険の旅)』です 。

「原作で、地下ガレージの隅っこにかつての冒険メカ(ピンポン号)が置いてあるコマを見つけて、『今でも時々、内緒で冒険に出かけているんじゃないか』と妄想したんです。メカのメンテナンス中にコーヒーを飲んで休憩しているところへ、『博士、またどこかに行くの?』とアラレちゃんがやってきた、そんな場面をイメージしました」

  • アドベンチャージャーニー(冒険の旅)

    アドベンチャージャーニー(冒険の旅)

驚くべきことに、このフィギュアたちはガンプラの人間を改造し、髪を伸ばしてリアルな等身へと仕立て直したもの。既存のキャラクターに独自のその後を付け足して映画化してしまう、その妄想力には脱帽するしかありません。

漢字の読めない猫!?鳥山明デザインの犬と紡ぐ、1シーンの宇宙創生

  • 失われた文明

    失われた文明

――こちらの猫の宇宙飛行士と、謎の犬の銅像の作品も独特の世界観ですね。

「これは『失われた文明』という完全オリジナルのSF作品です 。宇宙の果ての知らない星にたどり着いた猫の宇宙飛行士が、滅び去った文明の跡を調査しているイメージですね」

銅像の台座には「五式犬」という漢字が刻まれています。

  • 失われた文明

    失われた文明

「猫にはこの漢字が読めないんです 。『これは何を意味しているんだろう、この星の戦士だろうか』と、遠い未来に思いを馳せている。実はこの犬、ファインモールドさんのキットで、鳥山明先生がデザインしたマスコットキャラクターなんですよ。ホビーショーで見つけて、猫のフィギュアと組み合わせたら面白い物語ができるんじゃないかと」

SF名作映画『猿の惑星』を彷彿とさせる壮大なバックストーリー。三島さんは、市販のプラモデルのパーツをリミックスし、誰も見たことのない映画の1シーンを3Dで現実世界に削り出しているのです。

すべての作品にキャッチコピーがある!展示会という名の映画館

  • 自作の映画ポスター風カード

    自作の映画ポスター風カード

今回の展示会で、何より来場者を驚かせたのが、作品の前に置かれた「作品カード」でした。よくある作品名と作者名だけのカードではありません 。三島さんは、すべての作品に自作の映画ポスター風カードを添えていたのです 。

カードには「今日の日付でのロードショー表記」や、「彩る世界で、そこで色が生まれ世界が育つ」といった、映画さながらのキャッチコピーがズラリと並びます。

「作品を作って終わりじゃなくて、もう一展開、自分の中からストーリーを絞り出したかったんです。ポスターのフレーズを見たお客さんが、『あぁ、これはきっと、こういう映画なんだな』って勝手に想像して楽しんでくれたら、これ以上嬉しいことはないですね」

偽らずに自分を表現することで素晴らしい作品を立体化していった

  • 本名の三島厚司として表現

    本名の三島厚司として表現

普段はSNSなどでレオというハンドルネームで活動している三島さん。しかし、今回の展示会では、あえて本名の三島厚司として主催者欄に名前を連ねました。

「ネットの世界じゃなくて、目の前に人がいる現実ですからね。偽らずに、自分の名前で、自分の思うままの表現をやりたかったんです」

友達が描いた絵、大好きなスヌーピー、雨上がりの水たまり……。三島さんの目を通すと、日常のすべての記憶や感情が、3D映画のスクリーンのように立体化していきます。

「また来年もこの場所でやってみたいですね」

はにかみながらそう語る立体映画監督・三島厚司さんのちいさな映画館は、これからも私たちのイマジネーションを優しく、そして激しく揺さぶり続けてくれるに違いありません。次はどんな1シーンで、私たちを驚かせてくれるのでしょうか。期待に胸が高まりますね。

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