「ここまでやるか!?」老舗RCメーカーの担当者が熱弁する、10分の1サイズに凝縮された"異常すぎる実車愛"に呆然<静岡ホビーショー2026>
-
京商が展示した、こだわりが詰まりまくったラジコンたち
プラモデルやラジコンの世界において、誰もが憧れる主役といえば、サーキットを猛スピードで駆け抜けるピカピカのレーシングカーやスーパーカーです。
しかし今、大人のホビー界で凄まじい熱狂を生み出しているのは、スピードを競うわけでもなく、時速わずか数キロで泥や岩場をじわじわと這い上がる地味で無骨な四輪駆動車でした。
国内ホビー界の老舗メーカー・京商(KYOSHO)の静岡ホビーショーブースに堂々と鎮座する、新型ラジコン『KC10 トヨタ ランドクルーザー60』。これ、一見すると精巧なミニカーのようですよね。
しかし、開発に携わった担当者の口からは、車やラジコンに興味がない人からすればもはや呪文にしか聞こえないような、狂気的とも言える凄まじいこだわりが熱く語られました。知れば知るほど、その愛情にただひたすら驚かされるはずですよ。
針金ピンを完全排除!外観を1ミリも妥協しない最新ボディの衝撃ラジコンカー
-
どこからどう見ても「本物のランクル60」そのもの。しかしこれは1/10スケールのラジコンだ
ラジコンカーといえば、子どもの頃に遊んだおもちゃの車を連想する人が多いかもしれません。あるいは、プラスチックの車体に、固定用の細い針金ピン(クリップピン)が突き出ている姿を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、京商が満を持して発表したこの『KC10』には、そのラジコン特有の現実を引き戻すパーツが一切見当たりません。
――これ、本当にラジコンなんですか?どこかのカスタム実車かと思ってしまうほどの立体感と迫力ですね!
「ありがとうございます!この静岡ホビーショーで発表したばかりの、完全新設計のモデルなんです。『KC10』という名前が付いているのですが、本格的な1/10スケールサイズのロッククローラー(岩場を登るマシン)タイプとして、京商としては久しぶりにラインナップしました。
今回は、トヨタのランドクルーザー60という名車を再現していまして、丸目2灯の前期型(タイプ1)と、後期型の四角いライトのやつ(タイプ2)の2種類を同時に用意しています」
-
ボディピンを無くしたことで、本物の自動車さながらにパカッと開閉するギミックを実現
――よく見ると、車体のどこにもラジコンっぽい留め具が見当たりませんね。
「そうなんです。これまではボディを車体に固定するために、どうしても金属のクリップピンを外側に出さざるを得なかったんです。でもそれがあると、どうしても『模型っぽさ』が出てしまう。そこで今回は『ウルトラスケールボディプラス』と命名して、ピンの無いクリップレス仕様に進化させました。
これ、車体の下側にある特定の機能を使うと……。ほら、こうやって実車のボンネットのようにパカッと綺麗にボディが開くんです。すぐに中の車体(シャシー)へアクセスできる利便性を持ちながら、外観の美しさは一切損なわない仕様になっています」
――開けた内側まで、泥よけ(フェンダー)のパーツがしっかり作り込まれていて驚きました。
「そこを気づいていただけるのは嬉しいですね!タイヤの奥を覗き込んだときに、ちゃんとフェンダーの裏側が見えるようにプラスチックの成型品を入れているんです。これによって、タイヤが大きく動いたときに、中のメカニズムが丸見えになって興奮が冷めないように演出しています。
さらに、前期型と後期型で、フロントのカンガルーバンパーやライト回り、グリルのデザインを変えるのは当然として、シュノーケル(吸気管)やルーフキャリア、後ろ側のラダー(ハシゴ)といった細かい装備の有無まで小技を利かせているんです。ドアミラーかフェンダーミラーか、モールの材質、ホイールのデザインに至るまで、実車の歴史を踏まえて徹底的に作り分けています」
一般的なラジコンは、軽さや頑丈さを優先して、細かい装飾パーツを省いたりステッカーで済ませたりすることが多々あります。しかし、このランクル60は別格。実車オーナーが「そうそう、ここが違うんだよ!」とニヤリとしてしまうようなディテールを、ABSプラスチックなどのリアルな素材を用いて忠実に再現しているのです。もはや走るプラモデルであり、その異常なまでの再現度が、大人の所有欲をこれでもかと刺激します。
時速はなんと歩くほどしかない!あえてスピードを捨てた岩登りという贅沢な快感
-
車体の裏側には、本物の4WD車と全く同じ構造のサスペンションが張り巡らされている
単に外見が美しいだけなら、精巧なミニカーと変わりません。このマシンが「おとなの秘密基地」にふさわしい究極のホビーと呼ばれる理由は、その内部構造と走り方にありました。
――素人目線で大変失礼なのですが……、ラジコンって、広い場所でギュンギュン猛スピードで走らせるのが楽しいんじゃないんですか?
「あはは、確かにそう思いますよね。でも、この『ロッククローラー』というジャンルは、全く逆なんです。速さは重要ではありません。
海外では、本物の4WD車を使って、人が歩くほどのスピードで巨大な岩山を這い登る競技があるんです。このラジコンはその世界を完全に再現しています。だから重要なのは、スピードではなくでこぼこの衝撃をいかに滑らかに吸収して、悪路を踏み越えていけるかなんです」
――なるほど。だから車体の裏側が、まるで本物の車輪の軸みたいに複雑なんですね。
「その通りです。車体底面のアクスルメンバー(車軸)からリンケージ(骨組み)の組み方まで、実車さながらのサスペンション設計をしています。でこぼこを綺麗に吸収して、車体自体はできるだけ水平を保ったまま進むように作りました。
もし本物の4WD車に乗っている方がこれを見たら、『自分が乗っている実車のサスペンションと同じ機構だ!』と、間違いなく萌えっとしてもらえるポイントだと思います(笑)」
-
指で押すとグニャリと凹むタイヤ。このたわみこそが、悪路を捉えるための生命線だ
――タイヤもずいぶん柔らかい気がします。
「ここもすごく重要です!このラジコンは、硬いタイヤで弾むように走るのではなく、実車のようにタイヤのゴムをグニュッと潰しながら、岩肌にへばりつくようにして走るんです。中の空気圧をどれくらいにするか、タイヤの潰れ具合をどうセッティングするかが、走破性を大きく左右します。
さらに、京商のこだわりとして、バッテリーなどの重いパーツを搭載する位置を、前側にしたり後ろ側にしたりと変更できるようにしています。重心の位置をどこに置くかによって、急な斜面を登るときの安定感がガラリと変わるんですよ。こういう実車さながらのセッティングを楽しめるのも、このマシンの醍醐味ですね」
一般的なラジコンのタイヤは、摩耗に強くスピードが出やすい硬めのゴムが使われます。しかし、この『KC10』のタイヤは指で押すと簡単に凹むほど極軟仕様。実車がタイヤの空気を少し抜いて、泥地や岩場との接地面積を広げて走るオーバーランダースタイルのリアルな挙動を、手のひらサイズで忠実に再現するための狂気的なこだわりです。スピードを捨てた代わりに手に入れたのは、実車が荒野をトレイルする際の本物さながらの重厚感でした。
最大50度の急坂を制破!プロポのスイッチで発動する謎のギミックがすごすぎる
-
壁に見えるほどの急斜面(50度)を、スリップしながらも力強く登り切る
ここからは、実際にこのマシンを開発した杉本さんにバトンタッチし、その驚異的な走行性能を目の前で見せてもらうことになりました。
――目の前にそびえ立つ木製の坂道ですが……。これ、ほとんど壁じゃないですか!?
「百聞は一見にしかずです。杉本君、ちょっと登らせてみて!」
「はい、いきます!」
――(静かなモーター音を響かせながら、ゆっくりとランクルが坂を登り始めるのを見て)うわっ、すごい!タイヤが一瞬滑りながらも、グイグイ登っていきますね!
「これ、最大で50度の斜度まで登れる性能が組み込まれているんです。4輪のうち、どこか1輪でも路面を掴んでいれば、そのまま頂上まで登り切ることができます。
下るときもギアの変速を使って、ブレーキをかけながらジワジワと、つーっと滑らかに降りてこられる。横から見てもらうとわかると思うのですが、これだけ足回りがデコボコに合わせて大きく動いているのに、人が乗るキャビン(車体)の部分は驚くほどまっすぐ安定して進んでいるでしょ?これが設計の妙なんです」
-
前輪だけが回り、後輪はガチッとロック。その場でクルリと円を描くように回るディグ機能
――今、カチャッと音がして、車の動きがガラッと変わりました。後ろのタイヤが止まっていませんか?
「よく気づきましたね!それが今回ぜひご紹介したいオプションのディグ機能です。
実車の4WDなどにもある機能なのですが、後ろのタイヤの回転をガチッとロックさせて、前輪だけを駆動させるんです。そうすると、ロックされた後輪を軸にして、コンパスのようにその場でクルリと小回り(超信地旋回)ができるようになります。
この機能を、手元のプロポ(送信機)にある3チャンネル目のスイッチをカチャッと入れるだけで、ラジコン側で瞬時に発動させることができるんです」
――スピードを出して曲がるのではなく、その場の地形に合わせてギミックを駆使するんですね。
「そうなんです!この岩山(ジオラマ)を見てください。この険しいルートのどこを通ったら、車のお腹を擦らずにクリアできるか。『よし、まずは左の前輪をあの岩に乗せて、車高を確保して……、次は右のタイヤをあっちへ逃がそう』という風に、自分自身で道筋を読んで走らせるのが、たまらなく面白いんですよ。
さらに、普段はジワジワ走るのが楽しい車ですが、『ここは一気にスピードを出して駆け抜けたい!』という瞬間のために、プロポのレバーでもう一チャンネル操作すると、なんと2速ギアにシフトアップして高速走行ができるオプション機能まであります」
――ゆっくり走るための車なのに、わざわざ2速変速ギアまで仕込むとは……。本当に大人の遊び心が詰まっていますね。
「速いことが全てじゃない、むしろ遅さやメカの挙動を楽しむ。上に小さなタイヤやボックスを積んだり、ネットを張ったりして、自分だけのジオラマ感を演出してリアリズムを上げていく。そんな風に、自由な発想で楽しんでほしいですね」
「日本に生まれて良かった」老舗メーカーが語るホビーという名の極上の贅沢
-
笑顔でインタビューに答える京商の担当者。「模型は贅沢」という言葉に実車愛が滲む
大の大人が四つん這いになりながら、手のひらサイズの車のサスペンションが動く様子を眺めて「萌える」と語り、最大50度の急坂を登り切る姿に歓声をあげる。一見すると、興味のない人には理解しがたい、きわめてニッチでディープな世界かもしれません。
しかし、インタビューの最後に京商の担当者さんがこぼした言葉は、この「おとなの秘密基地」という番組が追い求め続ける、趣味の真髄を突くものでした。
――実車の世界観がここまで完璧に再現されていて、実際に悪路を走破できるなんて、夢のようなおもちゃですね。
「本当にそう思います。あの角度の坂をグイグイ登る姿を見るだけで、大人でも『おおっ!』って声が出ちゃうじゃないですか。
僕、たまに思うんですよ。日本って、こういうマニアックでハイレベルな模型やラジコンが、最初から高い完成度で、お店で普通に買って遊べる国じゃないですか。それって、めちゃくちゃいい国だな、恵まれているなあって。
だって、生活に絶対に必要かと言われたら、そうではない。模型や趣味って、人生における最高の贅沢ですからね。だからこそ、僕らは1ミリも妥協せず、お客様が心から満足できる最高のアイテムを作りたいんです。最高ですよ、大人のホビーは(笑)」
「こんな細かい部分、誰も気づかないかもしれない。だけど、本物はこうなっているから絶対に再現するんだ!」という、京商のエンジニアたちの職人としての意地と誇り。そして、それを見てニヤリと微笑み、少年の目に戻って週末のキャンプ場へとマシンを持ち出す大人たちの情熱。
自動車やラジコンへの興味の有無を超えて、何か一つのことに人生を捧げ、徹底的に楽しむことの美しさが、その10分の1の小さな車体にはぎっしりと凝縮されていました。慌ただしい日常を忘れ、自分だけの極上の秘密基地でこだわりのギアを愛でる……。そんな、大人に許された最高に贅沢な時間を、あなたも体感してみませんか?
この記事の番組を動画配信で観る
この記事をシェアする






