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足袋型ゴルフシューズ
岡山県倉敷市の老舗シューズメーカーが、培ってきた独自の技術で瞬発力が高められるゴルフシューズを開発しました。商品開発の狙いは、メーカーからの受託生産=OEMからの脱却です。
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高谷康太郎さん
プロゴルファーを目指す高谷康太郎さん。2024年、3度目のプロテストを受け、合格まであと一打差に迫ったといいます。
曲がりがちだったドライバーの精度を改善するため、取り入れたのが足袋型ゴルフシューズ「バルタン」です。
高谷康太郎さん:
「足元がしっかり安定するので、ドライバーの精度は明らかに良くなっていますね」
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「VALTAN(バルタン)」2万2000円
「バルタン」は2024年8月の発売から8カ月で、約3000足が売れました。作っているのは、岡山県倉敷市の岡本製甲。国内で初めてゴルフシューズを量産化した会社です。
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一般的なゴルフシューズと足袋型ゴルフシューズの違い
一般のシューズは爪先が細く、足が固定されてしまいます。そのため指の負担が大きく、自由に動かすことができません。一方、足袋型のバルタンは親指と人差し指の間で分かれ、親指を素足のように自由に動かせます。より踏ん張りがきくほか、地面を蹴る力も高まるため、力強いスイングにつながるといいます。
岡本製甲 岡本陽一社長:
「いつか岡本製甲としてオリジナルブランドを立ち上げて、ちゃんと工場経営が成り立つようにしていきたいというのが(会社に)入った当初から僕は思っていました」
野球部員との出会いが転機に
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岡山大学と共同研究
1964年創業の岡本製甲は、スポーツやファッションブランドの靴の生産を請け負うOEM生産を長年手がけてきました。しかし、バブル崩壊などで受注が激減。1996年の売上高は前年の13億円から3億円に減りました。新たな道を模索する中、営業先の高校で出会ったのが、地面をしっかりとらえるため、地下足袋で練習する野球部員たちでした。
これをヒントに岡山大学と共同研究をスタート。先端の切り込みの長さや角度などを調整し、2008年、足袋型のトレーニングシューズを完成させました。
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足袋型野球用スパイクは、ソフトバンクホークス藤井皓哉投手も使用
「指が鍛えられ、瞬発力が高められる」といった性能が認められ、文科省が刊行する科学技術白書にも掲載。2022年、野球用スパイクの受注生産を始めると、プロ野球選手や高校球児が愛用する人気商品となり、2025年4月には一般販売も始めました。
そして、満を持して足袋型ゴルフシューズに参入。なぜ、こうしたオリジナル商品を次々生み出すことができたのでしょうか。
長年培った一貫生産の技術、顧客への対応力を活かす
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岡本製甲 岡本陽一社長
岡本製甲 岡本陽一社長:
「60年間、(OEMで)多種多様なスポーツシューズを作り続けてきたことと、トップのプロのアスリートの靴を実際に携わって作ってきたこと、靴を作るうえでのノウハウの蓄積は非常に大きいです」
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岡本製甲の売上高(※売上高に占める自社商品の割合15%)
長年のOEM生産で、素材の裁断、縫製から、仕上げまで一貫生産の技術を磨き上げ、顧客の要望に応じて作り分ける対応力も身につけたことが、ヒット商品を生む力となりました。
ここ数年、4億円から5億円で推移していた売上高はバルタンを発売した昨年度、7億円を超え、OEMへの依存度を下げています。
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日本経済新聞社 岡山支局 眞鍋正巳支局長
日本経済新聞社 岡山支局 眞鍋正巳支局長:
「岡本製甲はスポーツやカジュアルなど、幅広い製品を外部の依頼で手掛けてきたことをむしろプラスとし、ノウハウとして生かしています。挑戦を続けることで、自社の強みに磨きをかけ、“脱下請け”の活路を見いだせたといえそうです」
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「スポーツの世界できちっと評価してもらいたい」と岡本社長
岡本製甲 岡本社長:
「スポーツの世界できちっと評価してもらえる靴を作りたい、というのが非常に大きいです。この足袋のシューズで実現していきたいのが大きな目標です」
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