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まるで本物かのような見た目の「シマフクロウ」の標本
鳥の起源や進化の過程、鳥標本を展示した展覧会「鳥~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~」(以下、鳥展)が3月15日(土)から6月15日(日)まで、名古屋市科学館で開催されています。
世界中から集めた400点以上もの鳥の標本が集結する本展覧会。中でも注目のコーナーをご紹介します!
リアルな鳥標本は必見!
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第4章「カモやキジのなかま」
会場内は「鳥類の起源と初期進化」「カモやキジのなかま」「猛禽とその仲間」など8つの章に分かれています。特に「絶滅」「翼」「猛禽」「ペンギン」「フウチョウ」の5つのテーマに分類された標本は必見!
身近な鳥や珍しい鳥、絶滅してしまった鳥などさまざまな鳥標本が展示されていて、今にも動き出しそうなほど精巧です。
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(写真左から)絶滅が危惧される「ライチョウ」「オガサワラカワラヒワ」「ヤンバルクイナ」
鳥類の起源や骨格を学ぶ
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鳥の骨格の構造を解説
第1章は「鳥類の起源と初期進化」。最も古い鳥類とされる始祖鳥から、現在の鳥類に至るまでの形態変化などが紹介されています。
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トビの羽標本
展覧会の序盤で魅了されたのが、トビの羽標本。鳥の羽毛には、飛ぶための羽と保温のための羽、2つの役割があるそう。羽の1つひとつがどんな形をしているのか、細部まで観察できます。
ガラス越しに見てもふわふわしていて、思わず触れたくなりました!
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羽毛の進化の変遷
羽毛の進化の変遷も詳しく展示されています。写真左の初期の羽は見るからに頑丈そうですが、現代に近づくほど、繊細で複雑なつくりになっています。
もともと鳥は、獣脚類(じゅうきゃくるい)の恐竜の子孫。そのため写真左のチューブ状の硬い羽毛でした。
しかし進化の過程で細かい繊維状の羽枝(うし)ができ、現在の風切り羽の形状に発展したといいます。
翼の形もさまざま!
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ハヤブサやアマツバメは速く、強く羽ばたくため、翼が短い
先に進むと、鳥ごとの翼の標本を発見! 縦の線は上に行くほど風に乗る「長い翼」に、下に行くほど強く羽ばたく「短い翼」になっています。
横の線は、左に行くほどゆっくり飛ぶための「丸い翼」になり、右に行くほど高速で飛ぶための「尖った翼」に。
例えばカルガモやツバメ、カワラバトなどは捕食者から逃げる必要があるため、短く、力強く羽ばたけるような翼になっています。
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クマタカやコウノトリの翼は大きく、丸い形が特徴
一方、長距離を移動するアホウドリやコハクチョウなどは体力の消耗を抑えるために、風をとらえてゆったりと飛翔できるような構造になっています。
ここまでの羽標本や翼標本だけでも見ごたえ抜群!
世界初!「ペラゴルニス・サンデルシ」の生体を復元
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中生代から新生代の鳥類
中生代や新生代に向けて鳥類がどのように進化したのか、わかりやすく描かれた系譜も紹介されています。この図の新生代に現れたのが、本展覧会の目玉である「ペラゴルニス・サンデルシ」です。
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見上げると古代の鳥が飛んでいる!?
ふと見上げると、「ペラゴルニス・サンデルシ」の生体復元モデルが天井に! ペラゴルニス類は、6200万年前から250年前にかけて分布した化石鳥類。翼開長7メートルで、史上最大の飛べる鳥です。
しかもこの生体復元プロジェクトは、世界初の試み。ぜひ会場内を見上げて、その大きさを体感してみてください!
ゲノム解析で鳥の大分類が変化
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ゲノム解析の結果分けられた鳥類の44の目(もく)を柱で表現
また「鳥展」の大きな見どころでもあるのが「ゲノム解析」です。ゲノム解析とは、生物の遺伝情報を解明すること。第2章「多様性サークル」では、このゲノム解析の結果によって変わった、鳥の系統について詳しく解説されています。
例えばハヤブサは、“タカ目(もく)ハヤブサ科”ではなく、“ハヤブサ目”として独立しました。ゲノム解析によって、タカ科よりもインコ目やスズメ目に近い系統であることが判明したのです。
10種類以上ものペンギンが登場
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ペンギン大集合
「ペンギン大集合」のコーナーでは、10種類以上ものペンギンの標本がずらり! フンボルトペンギンやオウサマペンギン、マゼランペンギン、ジェンツーペンギンといった水族館でおなじみのペンギンたちが並んでいます。
立ち姿がかわいらしく、その場でよちよち歩き出しそうな雰囲気を感じさせます。
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ツルの求愛ダンスを再現
ツル目のコーナーでは、ツルのつがいが求愛ダンスをする様子を映像で見ることができます。その求愛ダンスは、天井から吊るされた標本でもリアルに再現。
2羽が向かい合って羽をバタバタと羽ばたかせ、首を曲げたり伸ばしたり、場所を交代したり。仲良くじゃれ合っているような舞はとてもユニークです!
15の「鳥のひみつ」を読めば、“鳥博士”になれる!?
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会場内に展示された15の「鳥のひみつ」のパネル
さらに鳥の特徴や性質を漫画にした15の「鳥のひみつ」は、読みごたえたっぷり! 「ハトが教えてくれる 鳥の心」のパネルには、ハト独自の特徴が解説されています。
完成された「日本画」と「洋画」を、それぞれバラバラに細断して作り直した場合、人間にはどちらが日本画か洋画か、判断が難しくなります。しかしハトは学習すれば、瞬時に見分けられるそう。
全体を大雑把にとらえる人間に対し、ハトは微細な部分にこだわったとらえ方をしているからなんだとか!
獲物を捕らえたシマフクロウに、美しいオオフウチョウも展示
フクロウやハヤブサ、タカなどの仲間が集まる猛禽類とフウチョウのコーナーでは、なかなか見ることができない貴重な鳥たちに出会えます。
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シマフクロウの標本
獲物を捕らえた「シマフクロウ」の標本は、今にも飛び立ちそうなほど迫力満点! 翼を広げているので、1つひとつの風切り羽のつくりをじっくりと観察できます。
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オオフウチョウ
注目してもらいたいのが、美しい羽を持つ「オオフウチョウ」。フウチョウの中で最も代表的な種類です。ニューギニア島南部と南西部の島しょ(アルー諸島)の標高1000メートルまでの低地林に生息しています。
このオオフウチョウをはじめ、9種類ものフウチョウの標本が集まるのはとても貴重!
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シマエナガ
ほかにも、北海道に生息する頭部が白い「シマエナガ」の姿も。そのかわいらしい見た目から“雪の妖精”ともいわれています。ちなみに千葉県北中部には「チバエナガ」と呼ばれる個体もいるそう!
「ニワトリ」と「人」の深い関係
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第8章のエピローグ「なごやにまつわる鳥と人」
展覧会の終盤では、名古屋の人にとっては馴染み深い「名古屋コーチン」の歴史にフォーカスしています。
明治時代に生まれた「名古屋コーチン」は、在来の地鶏と中国から輸入された「バフコーチン」を交配して作られた品種。100年以上経った今なお、名古屋の名物として愛されています。
鳥をモチーフにしたかわいらしいグッズも
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「鳥展」グッズコーナー
そして「鳥展」の出口には、かわいらしい鳥のイラストが描かれたクリアファイルやポーチ、トートバッグなどのグッズも用意。中には鳥のイラストがデザインされたTシャツも並びます。
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「鳥展」の公式図録
「鳥展」の内容を振り返りたい方には、公式図録もおすすめ! 鳥の知られざる生態がわかりやすく解説されているので、この機会に手に取ってみてはいかがでしょう。
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名古屋市科学館の入口
特別展「鳥~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~」は、6月15日(日)まで開催中。身近な鳥の生態をたっぷりと知れるチャンスです! ぜひ週末のお出かけに、足を運んでみてください。
イベント概要
特別展「鳥~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~」
開催期間:2025年3月15日(土)~6月15日(日)
開館時間:9:30~17:00(入場は16:30まで)
会場:名古屋市科学館(愛知県名古屋市中区栄二丁目17番1号)
休館日:毎週月曜日、第3金曜日、5月7日(水)、ただし、5月5日(月・祝)は開館
チケット料金:当日券 一般1800円、高大生1000円、小中生500円
※詳しくは公式ホームページにてご確認を。
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