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「ホーユーヘアカラーミュージアム」
皆さんは、どんなときに髪を染めますか? 「白髪が気になる」「垢抜けたい!」「気分を変えたい」。ヘアカラーを変えることで、前向きになれる人もいるかもしれません。
そもそもヘアカラーはどんな歴史をたどってきたのでしょうか。ヘアカラーの謎を解き明かすべく、名古屋市東区「徳川園」のすぐそばにある「ホーユーヘアカラーミュージアム」に行ってきました!
入館無料!ヘアカラーに特化したミュージアム
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ホーユー株式会社が手がけたヘアカラーリング剤
名古屋市に本社を置くホーユー株式会社は、創業100年以上を誇る老舗企業。ヘアカラーリング剤の大手メーカーとして、「ビゲン」「シエロ」「ビューティラボ」など、数々のロングセラー商品を手がけています。
同社の創立100周年を記念して2023年に開館したのが、この「ホーユーヘアカラーミュージアム」です。
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2階の体験スペース
館内は3フロアに分かれていて、なんと入館は無料! 館内ツアーも1日2回(10:30~、14:00~)開催されています。今回は1階の企画展を最後にして、2階→3階→1階の順に、館内を巡りました!
2階:「日本のヘアカラー史エリア」
最初に向かったのは、ミュージアム2階の「日本のヘアカラー史エリア」。奈良時代や江戸、昭和、平成以降など時代ごとのヘアカラーリングの歴史や技術、製品が展示されています。
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白髪にまつわる短歌
実は奈良時代から白髪は老いの象徴だったそう。当時の『万葉集』にも、白髪にまつわる短歌が詠まれているんです。
黒髪に白髪交じり老ゆるまで かかる戀(恋)にはいまだあはなくに
『万葉集』の代表的な歌人・大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)が詠んだこの恋歌は「黒髪に白髪が混じる老年の今まで、これほどの恋に陥ったことはない」との意味が込められています。
白髪が生えること=恋をすることすら難しい。「白髪を黒く、美しく見せたい」という価値観は、この頃から根付いていたのですね。
日本で初めて白髪を黒くした武士
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戦の前にひげを黒くしてもらう年老いた斎藤実盛(さねもり)―安斎による(国際日本文化研究センター)
白髪や白ひげを黒くした最初の日本人といわれているのが、平安時代末期の武士・斎藤実盛(さねもり)です。70余歳という老齢にして、源平の戦いに出た実盛。自分自身を若々しく、強く見せるために、墨を使って髪やひげを黒く塗っていたといいます。
西洋文化の発展とともにヘアカラーが流行
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明治~大正時代の国産染毛剤
日本のヘアカラーの転換期となったのは明治時代。この頃、西洋の文物を積極的に取り入れられるようになり、ヨーロッパで開発された染毛の技術が日本でも広まるようになりました。
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館長の梶原秀一さんも見どころの1つとしてあげる、明治・大正時代のポスター。艶やかな女性の髪が印象的
1905年には、日本初の酸化染料による染毛剤が発売。1909年にはホーユーの創業者である水野増次郎が、酸化染料の染毛剤「白髪赤毛染 二羽からす」を打ち出します。当時は6~8時間もの時間をかけて、白髪を黒く染め上げていたそう! その後は染色技術が上がり、染毛時間が30分と大幅に短縮しました。
ちなみに酸化染毛剤とは、化学染料が酸素に触れることで発色する画期的なカラーリング剤。色持ちも良く、その染毛の仕組みは現在も変わらず使われています。
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発売当初からヒットした「元禄」。染料の包材をビンから薬包紙に替えたことで大幅にコストを下げた
1921年には他社製品よりも安く販売した新染毛剤「元禄」が大ヒット。1957 年には現在の主力商品の1つでもある「ビゲン」が開発されました。
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(写真右)1957年に発売された、粉末一剤式の「ビゲン」。三剤を混ぜて使うのが主流だった「元禄」に比べて使いやすいと話題に
時代を彩るヘアカラーの世界
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「ホーユーヘアカラーミュージアム」館長の梶原秀一さん
館長の梶原秀一さんは「ファッションや文化、生活様式の変化とともにヘアカラーの幅も広がった」と話します。
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茶髪ブーム前後の一般黒髪用の商品
1957年・58年までの市販の白髪用のヘアカラーリング剤は1~3色しかありませんでした。しかし90年代後半には、安室奈美恵さんによる“アムラーブーム”とともに、セルフブリーチや茶髪が大流行! そこからヘアカラーが一般的となり、今では白髪用・黒髪用ともに30色以上ものヘアカラーがラインアップしています。
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2010年に発売された「ビューティラボ ふりふりホイップヘアカラー」など、当時の懐かしいパッケージが並ぶ
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ヘアダメージを軽減する「プレックス剤」も登場
技術の進化やトレンドの変化とともに、青や緑、ピンクなどのビビッドなカラーから、ベージュやグレーといったニュアンスカラーまで表現できるようになったのですね!
自分に似合う髪色は? AIが提案するヘアスタイル
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ヘアスタイルを提案してくれる「画像シミュレーター」
先に進むと、自分に似合うヘアカラーやヘアスタイルを提案してくれる「体感エリア」もありました。画像シミュレーターでは、モニターの前に立ってスタートボタンを押すと、AIが自分の顔にぴったりなヘアスタイルを分析してくれます。
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画面上で自分の髪色をチェンジできる「髪色シミュレーション」
こちらはリアルタイムで自分の髪色をシミュレーションできるもの。来館したお客さんも「次はこの色にしよう!」と写真を撮って、次回のヘアカラーの参考にしているとか!
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毛髪表面観察
ほかにも、スタッフさんにお願いすると毛髪表面を観察できます。髪の毛のキューティクルがどれくらい傷ついているのかを、5段階で評価してくれます。
悲しいことに、一度剥がれ落ちてしまったキューティクルは元には戻らないそう。「優しく洗ったり拭いたりして、髪を大事に扱うことがキューティクルを美しく保つ秘訣」と、スタッフさんが教えてくれました!
3階:「ホーユー展示室」
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ミュージアム3階にある「ホーユー展示室」
「ホーユー展示室」の3階は、ホーユーの会社史や製品開発、安全性への取り組み、100年先を見据えた事業まで解説されています。
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種類豊富なホーユーの製品が並ぶ3階の展示室
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「元禄」
「元禄」のパッケージにデザインされた市松模様(元禄模様)。大正初期に流行した模様で、商品名の由来にもなっています。
正面に描かれた侍は、商品名にもなった元禄時代のヒーロー、大石内蔵助をモチーフにしたもの。ホーユーの創業者である水野増次郎が懇意の得意先と相談して採用したといいます。
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海外で販売されているヘアカラーリング剤
そして100年経った今、ホーユーの製品は世界中で愛されるように。中東のイランやイラクでは、世界でも珍しいひげ用のカラー剤を販売。海外の人々の生活や文化に合わせた製品を作り続けています。
1階:企画展「ヘアカラー展 なぜ染める、なぜ染まる。」
最後に訪れたのは、1階で開催されていた企画展「ヘアカラー展 なぜ染める、なぜ染まる。」。東京都世田谷区にある「せたがや文化財団生活工房」との共催で開かれています。開催のきっかけは、学芸員さんによる美容室でのエピソードからでした。
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「ヘアカラー展 なぜ染める、なぜ染まる。」会場
美容室で白髪を染めようとすると「ダブルカラー」「トリプルカラー」のメニューで予約する必要があります。「髪を染めたいだけなのに、なんで2度も3度も染めるのだろう?」。そんな“素朴なギモン”を企画展にしようと考えた学芸員さんが「ホーユーヘアカラーミュージアム」に依頼したことで、今回の「ヘアカラー展」が企画されました。
展覧会では、ヘアカラーが染まる仕組みや毛髪の構造、ヘアカラーリング剤の違いについて紹介されています。
どうやって髪が染まる? ヘアカラーを模型に!
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髪の毛の構造模型
こちらは髪の毛の構造(写真左)と染毛の構造(写真右)が分かる模型。なんと「お客さまが目で見て分かるように」と梶原館長が手作りしたんだとか!
模型写真の黒い球は紫外線などによってできるメラニン色素。明るい髪色を実現させるためには、髪を染めながら、このメラニン色素を分解するそうです。たしかに、右の模型を見ると、黒色の球が減って脱色した球が増えていますね!
梶原館長いわく、こうした髪の毛の染まる仕組みは、市販品とサロン品で違いはないといいます。
ヘアカラーリング剤、サロンと市販品の違い
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ヘアカラーリング剤を4つに分類
大きな違いは「個人の髪の状態に合わせて、薬剤などを調整できるかどうか」。ヘアサロンでは、美容師がお客さんの髪の根元や毛先の傷み具合を細かく分析。過酸化水素の濃度や薬剤を使い分けることで、希望通りの色味にカスタマイズしていきます。
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塗布具なども種類ごとに展示
一方、市販品は元の髪の色や状態に関わらず薬剤が塗られることを想定しています。髪の状態が根元や毛先などの場所によって異なっても、大きく仕上がりの色が変わらないように調整されているんです。
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2024年7月に中日美容専門学校様で行われたヘアデザインコンテストの受賞作品
ヘアカラーが多様化した現代だからこそ、髪色や髪型に悩んでしまうことも……。ですが、「ホーユーヘアカラーミュージアム」でヘアカラーの奥深さを知れば、きっと髪色・髪型選びが楽しくなるはずです!
そして梶原館長も「もっと自由にヘアカラーを楽しんでほしい」と笑顔で話していました。
もっと自由にヘアカラーを楽しもう!
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梶原館長の髪もツヤツヤ!
「当館は、皆さんのカラーリングライフの助けとなることを目指しています。歴史が好きな方だけでなく、ヘアカラーに対して悩みや疑問を持つ方もぜひお越しください」
施設概要
「ホーユーヘアカラーミュージアム」
住所:愛知県名古屋市東区徳川町903
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
入館料:無料
休館日:月曜、祝日、夏季休暇、年末年始
公式ホームページ:
https://www.museum.hoyu.co.jp/
●企画展「ヘアカラー展 なぜ染める、なぜ染まる。」
期間:2025年4月30日(水)~2025年8月31日(日)
1階企画展示室 入場無料
●館内ツアー
開催時間:10:30 ~、14:00~
予約不要 無料
※不定期で中止の日もございます。参加ご希望の方は時間までにロビーまで
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