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オート三輪「みずしま」
日本の高度成長期に貨物自動車の代表だったのが、オート三輪です。今回は数あるオート三輪のなかでも、三菱自動車が製造した「みずしま号」について解説していきます。
目次
●オート三輪とは?
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今回の取材車両は三菱「みずしま」 1957年式TM12F型
オート三輪とはエンジンが取り付けられた三輪自動車で、おもに1930年代から1950年代にかけて活躍しました。もともとはオートバイを三輪にすることで後部の荷室スペースを確保し、輸送目的として利用されることがほとんどのようです。
オート三輪は、マツダ「T2000」やダイハツ「ミゼット」のほか、日本内燃機「くろがね」などが有名です。
●現存する「みずしま」は貴重な車
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今回の取材車両は幌とドアが備えられているタイプ
「みずしま」は、1946年に新三菱重工業の水島製作所で誕生したオート三輪自動車です。水島製作所では、軍用航空機の製作で培ってきた技術をみずしまに転用します。航空機で用いられるアルミニウムやジュラルミン素材を活かすことで、他メーカーのオート三輪に比べて耐久性に優れているのが特徴です。
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フロントサスペンションはゼロ戦のフロントフォークを応用しているとのこと
ただし、みずしまは移動手段というよりは企業の運搬目的で利用されることがほとんどのため、乗り潰すことが多く、現存する個体が少ないのが現状です。
●大きな荷台が最大の魅力
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他のオート三輪にはない、広大な荷室スペースがみずしまの特徴
そして、みずしまが他のオート三輪と比較して、優れた特徴といえるのが大きな荷台です。1957年式のTM12F型の最大積載量は1000キロとなっていて、これは現在の商用車の代表的存在ともいえるトヨタ「ハイエース」と同じ最大積載量になります。
●「みずしま」独特の運転席、操作方法
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室内はオートバイそのものの独特な空間
また、みずしまはインテリアと操作方法がかなり独特といえます。ドアを開けると中央に運転席が存在し、シートにまたがるポジションは自動車というよりもオートバイそのものといえるでしょう。
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クセのある運転方法は慣れるまでに時間がかかるとか
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ステアリング右側に設けられているウインカー。左右に捻ることで指示機が作動する仕組み
ステアリングもバイクに近いものですが、操作方法はかなり個性的なものとなっています。みずしまにはアクセルペダルやスロットルはなく、加減速はステアリング右側にあるグリップ付近のレバーで調整します。
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乗車定員は2名で助手席は運転席左隣りの補助シート
そして、左側の足元のクラッチペダルとセンターに設けられたシフトレバーを操作して運転するといったコツを要するものとなっています。
●オートバイのようなエンジン
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オートバイと変わらない機構やメカニズム
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マニュアルシフトは独特なシフトパターン
エンジンはオートバイのようにシートとステアリングの間に搭載されています。TM12F型のエンジンは空冷850ccを搭載し、最高出力は27ps、最高速度は74km/hですが、当時の交通事情では荷物の運搬でも苦労することはなかったようです。
なお、みずしまは現存する絶対数が少ないため、価格設定が難しい車両ですが、取材協力元のクラシックカーナゴヤでは、車両本体価格が363万円(税込み)で販売されています。
※2022年9月時点の情報です。
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