独自のミリタリーテイストと重厚なフォルムで、熱狂的なファンを持つ「近藤版」ガンダム。その独特な世界観を、あえて「可動モデル」として立体化したのが、モデラーのT.T(ティーティー)さんです。
最新作であるν(ニュー)ガンダムの制作秘話や、動くことへの情熱、そして世代を超えて再評価される近藤デザインの魅力について話を聞きました。
ミリタリー調に再構築された、もうひとつのガンダム世界
――まずは、「近藤版」のガンダムとはどういったプラモデルでしょうか?
T.Tさん:
「漫画家でありデザイナーでもある近藤和久先生が、ガンダム作品をコミック化するにあたって独自のアレンジを加えたデザイン、それらを総じて『近藤版』と呼んでいます。もともとのガンダムというモチーフは同じなんですが、戦車や航空機といったミリタリー要素を模した形状になっていて、モビルスーツをよりリアルに追求した姿だと僕は解釈しています」
――展示作品の中には映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場するv(ニュー)ガンダムもあります。映画のシュッとした姿とは様相がだいぶ違いますね。
「これは映画でアムロ・レイに届けられる予定だった機体の、開発段階における『テストベッド(試験機)』という設定なんです。サイコミュを搭載しない状態で、地上での動作確認や運動性能をテストするために作られた機体。コミックの中では、工場や試験場に運ぶ最中にジオンの残党部隊が暴れているところに遭遇してしまい、パイロットの判断で急遽実戦投入され、敵を撃破していく。そうした熱いストーリーが描かれています」
骨格に「肉付け」して生まれる芸術的なシルエット
――これだけのボリュームですが、制作のベースになっているキットはあるのでしょうか。
「中身には1/100スケールのマスターグレード(MG)νガンダムが入っているんですよ。作り方としては、市販のキットを買ってきて、まずは外装を全部バラしてフレーム(骨格)だけの状態にします。その骨格を『叩き台』にして、自分なりの肉付けをしていくんです」
――この重厚な装甲はどのように作られていますか?
「なるべく軽量化させたいので、『プラ板』を使っています。近藤版のデザインはとにかくドッシリとしていて、そのまま作ると重量がモロにかかってしまう。僕は『上半身が大きく、下半身は細く』というプロポーションで作るのが好きなので、特に足への負担が大きいんです。だから、丸いパーツであってもパテではなく、プラ板を積層して削り出すことで軽さを出しています」
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近藤版ガンダムマークII
――フレームから作ることで、プロポーションの調整もしやすくなるのでしょうか。
「そうですね。一番のメリットは『関節が使える』ことです。イチから造形するのも手ですが、関節を動かした時のバランスって、素立ち(直立)のときとは全然変わってくるんですよ。フレームという素体があれば、実際に動かしてポーズを取らせながら、『屈んだときはこうなるから、ここの装甲はこうしよう』と調整しながら作っていけるんです」
「隙間」から覗くメカこそがロボットの醍醐味
――近藤版の作例では固定モデルも多い印象ですが、T.Tさんはあくまで「可動」に重きを置いていますね。
「僕はやっぱり、コミックのシーンが好きでやっているんです。近藤先生のカッコいいイラスト1枚を再現するのも素晴らしいですが、僕の中の近藤版は、銃を構えたり、敵に撃破されたりといった『動き』の中にあるんです。あのコミックのシーンを再現したいと思ったら、やはり関節が動かないといけない。
あと、僕は『関節の隙間』が好きなんですよ」
――隙間、ですか?
「可動モデルが苦手な人は『関節の動くための隙間』を嫌う傾向があって、そこを埋めて固定モデルにされる方が多いんですが、僕は逆にその『隙間』が大好きなんです(笑)。
ロボットなんだから、動く部分に隙間があって当然。その隙間からシリンダーやメカが見えるのがたまらないじゃないですか。わざと隙間を作って、そこにメカを詰めたいという感覚です」
――確かに、首周りや脇の隙間を覗き込むと、ギッシリとディテールが埋まっています。
「近藤先生の漫画って、遠目のコマだと省略されていても、アップのコマになるとものすごく細かく描き込まれているんです。その『アップになった時の密度』を想像しながら、見え隠れする隙間にメカを詰め込んでいく。設定画にない部分も『先生ならこう描くかな?』と想像してディテールを足していく作業が、モデラーとして本当に楽しい時間ですね」
世代を超えて響く「近藤版」のデザイン
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近藤版ズゴック
――会場でも多くの方が足を止めていました。ご覧になった方の反応はいかがですか?
「最近面白いのが、若い世代の反応なんです。昔から知っている世代の方が『懐かしいね』と言ってくれるのもうれしいんですが、近藤版を全く知らない若い子が『なにこれ、かっこいい!』と食いついてくれることが増えました」
――予備知識なしで、純粋にデザインとして評価してもらえるんですね。
「そうなんです。『これは近藤版といってね……』と説明すると、『こんなデザインがあるんですね!』と驚かれます。近藤先生のデザインは昭和に生まれたものですが、一周回って今の時代に新鮮に映っているのかもしれません。スカートが巨大だったり、変わったシルエットだったりしますが、それが『かっこいい』と受け入れられている。今まさに、近藤版の波が来ているな、と肌で感じています」
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