みなさんにとって「靴」は消耗品でしょうか? 礼服などのフォーマルな服装のお供として、また、ファッションアイテムとしてもたびたび登場する革靴には、消耗させるだけでなく、それを補いながら育てていく楽しみがあります。育てた革靴は、新品の靴では味わえない自分にとって唯一無二の靴へ……。今回は約16年履き続けている革靴を所有している達人による、革靴の手入れをお届けしていきます。
目次
手入れのための下準備
手入れする革靴のブランド「エドワードグリーン」
エドワードグリーンは、紳士の国であり革靴大国であるイギリスを代表する革靴ブランド。卓越した技術とラスト(木型)で非常に美しいドレスシューズを長年リリースしています。また、大手ファッションブランドの傘下に入っていない希少な独立ブランドとしても知られています。
馬毛ブラシでブラッシング
靴に付着しているホコリなどを毛足の長い馬毛ブラシを使って払い落としていきます。その際、ベロの部分にホコリが溜まりやすいので靴紐を抜いて作業します。
リムーバーを使って古い靴クリームを除去
靴クリームを新しいものと入れ替えるために、一度革靴をすっぴん状態にする必要があります。まず、柔らかいネル生地の端布を用意します。
指に巻き付けた寝る生地にリムーバーを塗布し、革靴を磨いて靴クリームを除去していきます。
皮表面の毛穴にまで入り込んだ靴クリームを除去するとネル生地にべったり付着します。
すっぴん状態になった革靴。一旦艶が消えて、フラットな印象に。
靴クリームで手入れ
新しい靴クリームを革靴に入れていきます。靴色に合わせたものを使って擦れなどの退色もカバー。
靴クリームの塗り方はさまざまありますが、達人は指で行う模様。指だと体温でクリームが溶けて馴染みやすく感じたり、塗布具合を指差しで感じ取りながら作業ができたりするとのこと。靴クリームはべったり塗らずに、薄く塗り広げていきます。
満遍なく靴クリームを塗り終えたら、ブラシに持ち替えて靴クリームを革に擦り込んで浸透させていきます。このときに使うのは柔らかい馬毛ブラシではなく、硬めで短毛の豚毛ブラシを使用します。
馬毛ブラシのときとは違い、ゴシゴシと毛穴に靴クリームを押し込むように磨いていくイメージ。
磨き終わると、全体的に艶が出て華やかな雰囲気になりました。
靴の中にもクリームを
多くの人が疎かにしがちですが、靴の外側だけでなく、内側もケアすることが大事だと達人は語ります。靴の中にも専用クリームを塗ってなじませることで着心地が柔らかくなり、足に馴染んで傷みにくくなるそう。
指でクリームをなじませ、表面に浮かびあがる指の跡で塗り具合を確認しながら進めていきます。
最後は“鏡面磨き”の工程です。鏡のように輝かせることで、より美しい革靴に仕上がります。
革靴に輝きを与える「鏡面磨き」とは?
靴用のワックスを使って革の表面を鏡のように反射するくらいツヤツヤにすること。薄いワックスの層を何層にも重ねることで輝きが増します。
ネル生地の巻き方
靴クリームを除去したときと同じく、ネル生地の端材を使ってワックスを塗っていきます。指の腹に置いた布面にシワが寄らないように巻き付けていきます。
指に布が巻き付けられたら準備完了です。使うワックスは、よりワックスの成分を際立たせるために一度乾かしたものを使用。
ただ、乾燥させたワックスは固く非常に塗り伸ばしにくいので、通常の柔らかいタイプとあわせて使用します。
ワックスの層をつくるには水が不可欠。ワックスの成分はろうと油。ごく少量の水を使うことで水となじまないワックスがのびて薄い膜が形成されていきます。
ワックスで輝かせるのは主につま先。全体ではなく、一部が輝かくことで手間をかけて作った鏡面仕上げもより映えてくれます。
鏡面磨きが決まって、新品と同等かそれ以上の輝きをまとったエドワードグリーンが完成しました。一足の手入れにかける時間はおよそ30分。手入れの頻度は人それぞれですが、それを行うだけでお気に入りの革靴を何十年も履いていられる、しかも、美観を損ねることなく、むしろ良くなることのほうがほとんどです。
靴磨き専門店でももちろん手入れできますが、自分で行うことで愛着は一層深くなることでしょう。
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