万年筆の種類や仕組みを解説! 60本も所有する達人が語る万年筆の魅力とは

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大人が身につけるステータスであり、文房具の枠を超え工芸品とも称される万年筆。その書き心地だけでなく、形やほどこされた装飾も大きな魅力です。今回は、約60本もの万年筆をコレクションする達人とともにその魅力をお届けしていきます。

目次

万年筆の基礎知識

  • 万年筆

    万年筆

万年筆は、本体内部のインクを毛細管現象で溝の作られたペン芯→ペン先へと供給し文字を書く筆記道具。その原型は953年まで遡るほど歴史の古いものです。モンブラン、ペリカン、ウォーターマンといったメーカーが世界的に有名で、モンブランのマイスターシュテックは世界最高峰の“万年筆の王様”と呼ばれ、ジョン・F・ケネディ、エリザベス女王、ダイアナ妃といった著名人が愛用していたことでも知られています。日本でもパイロットやセーラー万年筆といったメーカーは世界トップクラスの知名度と人気を誇っています。

ボールペンなどと違い筆圧で線に強弱がつけられるのが魅力。書き手の癖が如実に現れ、それが万年筆にも加わり、自分に馴染んだ筆記用具として育つ楽しみもあります。

愛好家のお気に入り万年筆とは?

  • 八分軸万年筆

    八分軸万年筆

書き心地で気に入っているのは、太い「八分軸万年筆」。軸は古いものですがペン先は現代版の太めのものに変更。軸は職人に頼んで漆を施したオリジナルモデルです。

  • 万年筆で紙に文字を書く様子

八分軸万年筆は、筆圧をかけていなくてもしっかりインクが乗ってくれるのがお気に入りポイント。インクののりが悪いと書き心地も良くありませんし、それが少しの差でも万年筆好きには大きな要素になってきます。

愛好家秘蔵のコレクション

  • オノト万年筆

    オノト万年筆

イギリスのデ・ラ・ルー社によって作られた「オノト万年筆」は夏目漱石も愛用した万年筆であり、ヴィンテージ万年筆の代表格として有名です。夏目漱石が愛用した理由の1つは、インク漏れを防ぐインキ止めという機構が備わっていたから。

  • (左)カートリッジ式、(右)インキ止め式

    (左)カートリッジ式、(右)インキ止め式

現在の万年筆はインクカートリッジからペン芯という部品でインク量を調整していますが、漱石の時代の万年筆には今のようなペン芯の性能はなく、インクが漏れやすかったそう。そこで登場したのがインキ止め式です。

  • インキ止め万年筆の構造

    インキ止め式万年筆の構造

インキ止め式の構造は、ペン芯だけでなく尻軸を操作して本体内部の中芯軸を動かし、インクの出を調整するというもの。インクの量を好みに調整できるメリットがあります。

  • 手が汚れやすいインキ止めの万年筆

    手が汚れやすいインキ止めの万年筆

その代わり、インキ止めの万年筆は現代の万年筆に比べるとインク交換は手間ですし、手が汚れる可能性も非常に高いです。そうした手間暇も楽しめるのが、インキ止めタイプのメリットといえます。

太字を細字にアレンジ

  • 太字の万年筆

    太字の万年筆

取り出したのはパイロット製の太字の万年筆です。これを好みの細字へと変更しようというもの。

  • ペン先を細くする

    ペン先を細くする

ペン先を紙やすりに当てて削り、形を細くしていきます。ただ、ペン先は万年筆の生命線。素材には金が使われ、製造原価の大部分を占めるほどといわれています。プロは専用器具を使ってものの数分で行ってしまいますが、ないため時間をかけて慎重に進めていきます。

  • ペン先の加工イメージ

    ペン先の加工イメージ

加工のイメージはこんな具合。加工するのはペン先約0.9mm幅。サイドを削り、紙に当たる部分にも手を加えます。

  • (左)荒削り前幅0.9 mm、(右)荒削り後幅0.45 mm

    (左)荒削り前・幅0.9 mm、(右)荒削り後・幅0.45 mm

荒削りで0.9mmの先端は0.45mmへ。ここまでの作業に約1時間を費やしましたが、ここからさらに仕上げに時間をかけます。

  • 目の細かいヤスリで荒削りのときにでた角を丸く落とす

    目の細かいヤスリで荒削りのときにでた角を丸く落とす

  • フィルム・シート、かな磨きシートでツルツルに

    フィルム・シート、かな磨きシートでツルツルに

  • フィルム・シート、かな磨きシートでツルツルに

  • 思わず笑みがこぼれる

    思わず笑みがこぼれる

こだわり抜いて仕上げたペン先の具合はいい感じと思わず笑みがこぼれます。

  • (左)加工前、(右)加工後

    (左)加工前、(右)加工後

  • 右は加工後に書いたもの

    右が加工後に書いた名前。加工前より細字に仕上がった

左の削る前とは一目瞭然の変化。書き心地も自分好みに合わせられ愛着の持てる1本となりました。

  • 万年筆で紙に文字を書く様子

メールやLINEといったツールでのやり取りが増えたり、学校の授業もデジタル化が進んだりと、昔に比べて文字を書く頻度は減りました。機会があったとしても手軽なボールペンが主流。万年筆の出番は非常に少なく、使ったことがないという人も珍しくありません。だからこそ万年筆にはホビーとしての魅力が非常に高いといえます。

形の凝ったもの、扱いに手間ひまがかかるクラシックタイプなどに触れて、万年筆の魅力、そして文字を認めることへの面白さを堪能してみてはいかがでしょうか。

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