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バードカービング
本物さながらの鳥の模型を作るバードカービング。当初はフィッシュカービングが目的で教室に通ったところ、他の生徒が鳥造りを行っているのをみてそちらの世界へ。これまでにおよそ20作品も仕上げている達人を紹介します。リアルさを追求した制作方法やマインドに注目です!
ベニヒワのバードカービング製作の準備
バードカービングとは?
もともとは鴨猟に使われていたデコイ(獲物をおびき寄せるおとり)が発祥の「バードカービング」。工芸品としてリアルに作られたものがそのままジャンルとなり、バードカービングという名前が付けられました。
趣味で製作されることはもちろん、博物館などで「鳥をリアルに表現する資料」として用いられたり、さまざまなシーンで見かけることがあります。
モデルの鳥「ベニヒワ」について
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ベニヒワ
ベニヒワは、ユーラシア大陸北部や北米大陸北部などに広く生息する渡り鳥です。寒気の強まる冬の時期に合わせてロシアから日本の北海道や本州北部にもやってきます。オスのみ額や胸が赤く染まります。
図面を描き、それをもとに素材をカット
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ベニヒワの図面
縮尺は行わず、実物大で製作。まずは側面、上面とさまざま角度の図面を描いておきます。
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鳥の型紙に合わせて、木材に鉛筆で線を入れる
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大まかに木材を切り落としたあと、細かく鳥を造形
次に図面をもとに形状を素材へとトレース。今回使う素材はチュペロという木材で、一般的な木材よりも年輪が目立ちにくく、やわらかくて切削しやすいのが特徴です。
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モーターツールを使用
モーターツールなどを使って大まかに形を作れたら、細部の造形へと作業を移します。
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鳥の造形を整えていく
リアルさを追求したディテール表現
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モーターツールのグラインダーを駆使
ここからは室内作業です。モーターツールのグラインダーを駆使して、表面を均したり細部のディテールを作り込んだりしていきます。
羽の1枚1枚にある凹凸。細かいですが、これをディテールとして表現できるとリアルな仕上がりにつながるんです。
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電熱ペンで羽の1枚1枚を描いていく
そこで登場するのが伝熱ペン。さまざまな刃先を使い分け、2cmの範囲で約30本の細かい羽のディテールを作っていきます。
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実際の鳥の羽
実際の羽はどこかでぶつけたりして避けているものもあったりするため、均等に入れているだけだと逆にリアルさが損なわれます。一部に幅の広いモールドを混ぜ込むことで、よりリアルなベニヒワが出来上がるんです。
羽を付け足したあとは、ガラス素材の“目”を入れます。パテに埋め込むように取り付け、はみ出したパテを活用して目の回りのディテールも表現していきます。
瞳が入ると一気に生き生きとした表情へと変化。瞳を入れることは、まさに命を吹き込むような作業です。このベニヒワの“生みの親”として、「非常に愛着が湧く」と達人は話します。
バードカービングを映えさせるディスプレイづくり
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色付けしたベニヒワ
本体に色付けをしたあとは、ベニヒワに似合うシチュエーションで飾り付けをします。
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木に止まらせる足を制作
そのためには、木に止まらせるための足が不可欠。針金を曲げて4本の指と土台に固定するための軸も製作します。
足の形ができたら、パテを被せて鳥の足らしい形状を作ります。針金にパテがなかなか定着しれくれないので根気が必要!
塗装するとこんな感じで、本物の鳥の足といった雰囲気に仕上がりました!
そしてベニヒワを木に止まらせるため、台座のイメージをイラスト化。今回のテーマは「晩秋」。折れて朽ちた木や落ち葉をベースに、細く伸びた枝に止まらせます。
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朽ちた木をベースにする
朽木はバルサ材を丸く削り出して、切り口を荒らして再現。
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木くずを振りかける
朽木には苔を生やしてさらにエイジング。苔表現には切削時に出た木くずを使用します。薄めた接着剤を塗ったところにふりかけて、色を付ければ完成!
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落ち葉は薄い銅板を切り出す
銅板を使うことで、落ち葉らしい丸まった葉っぱを作ることもできます。
木に完成させたベニヒワを設置すれば……。
ベニヒワのバードカービングが完成!?
これでベニヒワのバードカービングが完成!
……と思いきや、まだまだこれからとのこと。本当の完成はもう数羽完成させて設置させたときなんです。
1羽では単なる鳥の模型という雰囲気にも見えますが、数羽いることでドラマ性が生まれさらにリアルな雰囲気になります。
これはほかのジャンルにおけるジオラマ仕立てなディスプレイモデルにも言えることなので、ぜひ参考にしてみてください!
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