誰もが一度は経験したことがあるであろう天体観測。その多くが星座を司る星を確認したり、月の満ち欠けや流れ星、月食といった現象を観測したりするものがほとんどだと思いますが、今回は、一般的な方法ではなかなか見ることのできない部分に踏み込んだ天体観測のディープな世界をお届けします。
反射望遠鏡で星を眺める
反射望遠鏡とは
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反射望遠鏡
反射望遠鏡は鏡に写した星を接眼レンズで見るというもので、レンズの収差に影響されず、正確な形を観測しやすいです。また屈折望遠鏡よりも安価で大きな機材にすることができるため、より遠くの星を見ることができます。
ただし、その都度メンテナンスが必要だったり環境で見えにくくなったりと手軽にはなかなか扱いにくいというデメリットも。天文台に設置されている天体望遠鏡は主に反射望遠鏡が用いられています。
一般的に馴染みのあるものは「屈折望遠鏡」。レンズを通して光を屈折させ、被写体を拡大させるというものです。本体が密閉されているため環境に影響されにくく見え方が安定しているほか、特別な手入れも必要がないため扱いやすいですが、レンズにつきものの「収差」と呼ばれる結像の乱れが生じやすく、特に点像をみる天体観測では大きく影響してきます。
反射望遠鏡の仕組み
本体の底にある主鏡に星の光を集め、それを45度の副鏡に反射させ、接眼レンズに導くという流れ。仕組みさえ分かれば自作することも可能です。
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反射させる鏡
反射望遠鏡は事前に設置しておく
反射望遠鏡は環境の変化で見え方が安定しないので、観測するタイミングよりもかなり早めに設置して観測場所の環境に合わせる必要があります。日が暮れてから月を観測するために、まだ明るい夕方のうちにはセッティングしておきます。
自宅の2階で月のクレーターを見る
接眼レンズの高さに調整されている椅子に座り、右手に棒を持ってレンズを覗き込む達人。一度観測を始めると小一時間は同じ姿勢でいるため、右手の棒を支えにすることで長時間でも安定して覗き込めて、暗く写った遠くの星も観測しやすいそうです。
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赤丸部分がピタゴラス
今回観測するのは月のクレーター。ピタゴラスと呼ばれるもので、その大きさは直径約130kmとクレーターとしては標準サイズ。
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※クレーターを拡大した天体写真
達人お気に入りのクレーターはプラトー。クレーターの中に無数の小さなクレーターを持つものはほかにもありますが、プラトーのものは特に小さく観測しがいがあるといいます。
休憩にエスプレッソを楽しむのも屋外で。明るい部屋にいくと暗い場所で開いた瞳孔が閉じてしまい、再び目が暗さに慣れるまでに時間がかかります。
天体観測仲間とともに遠い銀河を見る
大きな反射望遠鏡がズラリと並んだ、天体仲間が集う場所へ。ここで、地球からはるか彼方にある星を観察することに。
達人が観測したのは、たびたび創作物のモチーフにされよく知られている「アンドロメダ銀河」。地球からおよそ250万光年という途方もない場所にありますが、達人にとっての観測対象としては近い存在だといいます。
仲間が捉えたのは、アンドロメダ銀河よりも遥か遠くの約2100万光年先にある渦巻銀河「M51銀河群」。
この日のシチュエーション的にもしかしたら観測できるかもと狙うのは、「NGC6745」と呼ばれる銀河で、その距離はなんと約2億600万光年。
人間の目の網膜は場所によって感度が違うそうで、じっと見つめるだけでなく少しキョロキョロさせながら銀河の僅かな光を探っていきます。
ようやく捉えたNGC6745は少しの空気の流れでも見えなくなるほどのかすかなもの。この儚さが約2億600万年前という途方もないスケールの大きさを感じさせるのです。
遠ければ遠いほど、小さければ小さいほどこの目で捉えたときの喜びが増すという達人。普段何気なく眺めている星の輝きすらも、自分たちが生まれるよりもずっと前から発生した光かもしれません。天体観測を通じて、宇宙の神秘性、ロマンに触れてみてはいかがでしょうか。
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