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答志島の人々が口を揃えて「日本一」と語る高級魚とは
「日本一うまい」と称されるサワラがあります。その舞台は、伊勢湾に浮かぶ三重県・鳥羽市の離島、答志島です。この島で水揚げされる「トロさわら」は、サワラの常識を覆すほどの脂のりと旨みを備えた、まさに特別な一尾。今回は、その魅力と漁の現場に迫ります。
島民が誇る“日本一うまいサワラ”とは?
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答志島近海で味わう、知る人ぞ知る「トロさわら」
冬から春にかけて旬を迎えるサワラ。その中でも、とりわけ脂のりに優れたものは”トロサさわら”と呼ばれています。答志島は、ミネラル豊富な伊勢湾と太平洋の黒潮が交わる恵まれた漁場に位置しており、極上のトロさわらが水揚げされるのです。
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厳格な基準をクリアした、選ばれしサワラがトロさわら
では、なぜ“奇跡の魚”と呼ばれるのでしょうか。その理由は、非常に厳しい認定基準にあります。傷がないこと、大きさ、そして脂肪含有量が10%以上であることなど、複数の条件をすべてクリアしなければ、トロさわらとして認められません。
その分、味は別格で、通常のサワラの約5倍の価格がつくこともあるといいます。その希少性から、答志島近郊の飲食店でしか味わえない、まさに“激レア高級魚”なのです。
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口にした瞬間に分かる、圧倒的な脂のり
島民が集まる飲食店で話を聞き、大将おすすめの食べ方でトロさわらを初体験。「これ以上おいしい魚はない」と語る大将。その言葉に期待が高まります。
まずは炙り。脂がとろけるような味わいで、格別のおいしさです。せっかくなので、お刺身と炙りのセットでいただきます。さらに、塩だけでシンプルに仕上げた塩焼きや、肉厚な身に味が染み込んだ煮つけも登場。どれも島ならではのご馳走です。
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トロさわらを追い求める、答志島の若手漁師・濱口照万さん
絶品のトロさわらを釣り上げる漁の現場を見てみたい。そう思い、若手漁師のもとを訪ねました。漁師歴9年、奇跡の魚を追い続ける濱口照万(はまぐち しょうま)さんです。トロさわらは10本釣れても、認定されるのは平均3本ほど。10時間かけて1本も釣れない日もあるといいます。
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サワラを傷つけないための道具、通称「サワラーズ」
漁法は、釣り糸を流しながら船を走らせる「引きつり」。トロさわらとして認定されるためには、1本釣りであることが必須です。少しでも傷がつくと、普通のサワラとして扱われてしまうため、傷をつけないことが“あたりまえ”。非常に神経を使う、シビアな世界です。
そんな照万さんには、どうしても負けたくない相手がいます。それが、父・時生(ときお)さん。サワラを釣る本数では8割方勝てないと語る照万さんですが、それでも「勝ちたい」と意気込みます。父と息子、互いに負けられない戦いが、日常の漁で密かに続いています。
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日の出前後が、ヒットしやすいゴールデンタイム
父に勝つため、照万さんは「トロさわら5本」という高い目標を掲げ、いざ出航します。漁場に到着すると、すぐに準備開始。エサはイワシを丸ごと1匹使用します。釣り糸を海に流し、船を走らせながらサワラを狙います。
タイムリミットは13時半。竿がしなれば、魚がかかった合図です。日の出とともに漁が始まりますが、なかなか反応はありません。1時間、3時間と時間が過ぎ、照万さんにプレッシャーがのしかかります。そのとき、まさかの2本同時ヒット。しかし、サワラかどうかはまだ分かりません。慎重に糸を手繰り寄せますが、狙いのサワラではなくガッカリ。
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次々に、大物のサワラをゲット!果たしてトロさわらか!?
ところがその直後、ついにサワラをゲット。傷もなく、ずっしりと重い一尾です。トロさわら認定の可能性は十分。勢いに乗った照万さんは、2本目、3本目、4本目と立て続けに釣り上げます。ここでタイムアップ。港へ戻り、運命の査定を迎えます。
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照万さんの釣ったサワラは、なんと全てトロさわらという結果に!
港に戻ると、すでに漁を終えた父・トキオさんの姿がありました。息子は4本、父は6本。勝負の行方を左右するのは、本数ではなくトロさわらかどうかです。
まず重要なのは、脂肪含有量の測定です。トキオさんの6本のうち、トロさわらと認定されたのは1本でした。続いて照万さんの4本を測定。脂肪含有量、計量ともに基準をクリアし、なんと4本すべてがトロさわら認定となりました。
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互いを刺激し合う父と息子の関係性が何だか素敵
今回は息子の勝利となりましたが、「次はコテンパンに負けるかもしれない」と照万さん。
一方、時生さんは「本数を釣っても、トロさわらでなければ意味がない」と語ります。
互いを認め合い、切磋琢磨する親子ーートロさわら漁の取材を通じて、素晴らしい親子関係を垣間見ることができました!
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