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ニコイチのゴミ収集車
模型愛好家によるオフ会「半田モデラーミーティング」の会場で、ひときわ異彩を放っていたのが中谷さんによる「ゴミ収集車」の作品です。一見すると海外の街角で見かける働く車ですが、そこには半世紀にわたるメーカーの歴史と、中谷さんの凄まじい「ゴミ」へのこだわりが凝縮されていました。
50年前の「ポシャった企画」を現代の技術で成仏させる
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ゴミ収集車の運転席
――非常に珍しい組み合わせの作品ですが、まずはこのキットの背景について教えてください。
「実はこれ、少し複雑な生い立ちがあるんです。後ろの荷台部分はアメリカのAMTというメーカーのキットなのですが、もともとは1970年代に企画されながら、メーカーの経営難で一度お蔵入りになった『幻のキット』なんです。それが最近になって、ブランドを引き継いだ別のメーカー・ラウンド2からようやく発売されたんですよ」
――50年越しの復活!それはモデラーとしても熱い展開ですね。
「そうなんです。ただ、そのまま組むのは面白くないなと思って、キャブ(運転席)の部分を別のトラックのキット(フォード・ルイビル)と組み合わせる『ニコイチ』にしました。さらに、あえてライトの形を改造して、僕が馴染みのある80年代後半のスタイルに変更しています。自分が一番カッコいいと思う時代の姿にしたかったんですよね」
――「働く車」としてのリアリティが凄いですが、特にこだわった部分はどこですか?
「ゴミ収集車となると、やっぱり『汚れ』の入れ方が重要です 。特にゴミを圧縮する内部機構は、常にゴミが擦れるので塗装は剥げているけれど、磨かれているから錆びるまではいかない……という独特の金属感を狙っています。決して綺麗ではないけれど、現役で動いている力強さを出したかったんです。この圧縮ギミック自体も、スムーズに動くように手を加えています」
メーカーの垣根を超えて「理想の形」を追求する
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アメリカのゴミ
――足元のゴミ箱やゴミ袋まで配置されていて、まるでジオラマのようです。
「おまけとしてゴミ箱も作ったのですが、中のゴミ袋は3Dプリンターで出力したものです 。実はその中身にもこだわっていて、インターネットで拾った『アメリカのゴミ』の画像を印刷して、クシャクシャにしてからビニール袋に詰めて自作しているんですよ。アメリカのストリートの雰囲気を出すために、鉄道模型用の落書きデカール(転写シール)も活用しました」
――最新の3Dプリンターを使いつつ、最後は「クシャクシャにする」というアナログな手法なのが面白いですね。
「結局、自分の頭の中にある風景を再現するには、手の込んだ作業が一番確実なんです。もう一点展示しているサニークーペも、実は『ニコイチ』作品です 。ベースは童友社の古いキットですが、顔周りが似ていないのでハセガワのパーツを移植し、ボディにもかなり手を入れています」
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ニコイチのサニークーペ
――メーカーの垣根を超えて、理想を形にされるわけですね。
「そうですね。今の車種にはない『味』や形を、自分の手ですり合わせて完成させる時間が、35年続けていても一番楽しいですね」
3Dプリンターという最新の「武器」を使いこなしながらも、その根底にあるのは「自分が納得するまで手を動かす」という職人気質なこだわりでした 。既存のキットに満足せず、メーカーさえも飛び越えて「理想の1台」を作り上げる中谷さん。その作品からは、単なる模型を超えた、当時のアメリカや日本の街並みが持つ「空気感」までもが伝わってくるようでした 。
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