愛知県東海市を舞台にした短編オムニバス映画『MIRRORLIAR FILMS Season7』に収録されるショートフィルムの監督の1人に、加藤シゲアキさんが選ばれました。2025年5月公開予定で、これから撮影を控えている加藤さんに今回の作品の構想はもちろん、つくり手に興味を持った理由なども含めてたっぷりとお話を伺いました。(聞き手:テレビ愛知アナウンサー/長江麻美)
目次
MIRRORLIAR FILMS Season7への参加は挑戦
――MIRRORLIAR FILMSへの参加の話があったときは、どのような気持ちでしたか?
加藤シゲアキさん(以下、加藤):「びっくりしましたね。もちろんプロジェクト自体も知っていましたけど、まさか自分が参加するとは思っていなくて。正直、僕にオファーしていただいても、ご迷惑をおかけするかもしれないなと思ったんです。でもMIRRORLIAR FILMS自体が、“新しい可能性のある方々と一緒に面白い映画をつくっていきたい”とのことだったので、失敗はあんまりないのかな、と。挑戦できる場はなかなかないので、ありがたいお話でした」
――加藤さんにとって今回は挑戦だった?
加藤:「挑戦ですね。映像をつくった経験は数回しかないですし、難しさも実感していました。小説はパソコンがあればできますが、映像作品はたくさんの人やお金がかかります。責任が重大なんですよね。僕自身は映画好きなので、自分が好きなジャンルに挑戦するのはうれしくもあり、怖くもあり、でしたね。
あと物語をつくっていて、これは小説よりも映画向きだなと思うことが結構あるんですよ」
小説と映画の違いは“アンコントロール”さ
――「映像向き」な作品とは?
加藤:「小説では “時間”が操れないんです。読者が読み進めるので、コントロールしきれない。映画はある程度受動的なので、決まった時間で物事が流れていく分、時間を明確に描けるのが小説とは違います。
また映像作品の“アンコントロール”な部分も好きで。映画はその作品に携わる皆さんの美的感覚やセンスが組み合わさって完成します。僕の中でストーリーやイメージができているけれど、おそらくその通りにはならない。そこが楽しみですね。僕のイメージを超えてくれるものがたくさんあるので、面白い作品になるんじゃないかな、と期待しています」
アイドルから"つくり手”に
――アイドルとして大活躍されている中で、つくり手にまわりたいと思ったきっかけは何ですか?
加藤:「生まれたときからですね。人生で最初に憧れた職業は、発明家だったんです。幼少期は漫画の『キテレツ大百科』に憧れて発明家になりたくて、ずっと段ボール切って組み立てたりしていたみたいで。この世に誕生したときから、モノをつくることが、生きる意味になっていたんです。表に出ることもモノをつくることになっていて、自分を表現するやりがいのある仕事。監督をしながらプレイヤーをする、スポーツ選手みたいな感覚ですね」
――大変じゃないですか?
加藤:「大変ですね(笑)。20代はとにかくがむしゃらでしたけど、30代になるともっと丁寧にやることの大事さや、より時間の使い方を考えるようになりました。今はツアー中で肉体的には疲れますが、精神的には健康で。パフォーマンスしたあとに、クリエイティブな作業に入るというのは、ある意味切り替えになっていいですね」
――どのタイミングで創作活動をしていますか?
加藤:「移動中や休みの日とか、ずっと考えています。下手したらライブ中に歌いながらできるかも(笑)。極端なことをいうと、どこでもできます」
独特な発想はどこから出てくる?
――加藤さんが手がけた短編小説「傘をもたない蟻たちは」では、未知の生物のイガヌが降ってくる「イガヌの雨」という作品がありました。そうした突飛な発想は、考えて出てくるものですか?
加藤:「ひらめきましたね。自分を天才だと思いました(笑)」
――あれはひらめきだったんですね!
加藤:「ウナギが絶滅危惧種として、レッドリストにのったというニュースを知ったんです。絶滅するかもしれないのに、みんな、ウナギを食べていることに違和感があって。それをウナギではなく、急に現れて急になくなる存在に置き換えてつくったのが始まりです」
――アイデアを生み出すために、心がけていることは何ですか?
加藤:「美術館に行ったり、映画を観たりして情報収集をしています。今年(2024年)は海外5カ所を巡って、とにかく足で稼ぎました。いろんなアートに触れたり、報道を意識したりして考えていると、どこにでもアイデアの種はあって。その中で、これ面白いな、なんでこうなるんだろう? と、自分の琴線に触れるものを常に探しています」
今回の映画は東海市民を怒らせるかも……
――今回の映画の舞台、東海市は周られましたか?
加藤:「シナリオハンティングで6月・7月あたりに2日間、がっつり東海市を周らせてもらいました。何件か製鉄所や工場を見学して、楽しかったです。東京にも工場地帯はたくさんありますが、東海市はもっと広かったですね」
――東海市で印象に残っているものは?
加藤:「植物園などを見に行きました。6月・7月は蘭がきれいと聞きましたが、蘭が全然なくて(笑)。蘭を見られる時期はとても短いらしいんですよ。本当は蘭を見たかったなぁ。あとはカゴメがあるので、トマトがおいしいと知りました。僕が思う東海市の魅力は、“カゴメと製鉄とときどき蘭”ですね。
ほかにも、とても住みやすい街だろうな、とも感じました。あまりにもきれいで新しい建物も多いんです。映画ではこの東海市のきれいさと広さは上手く映したくて。ただ、東海市に住む方が僕の作品を観て怒るんじゃないかな、と思うことも……。こんな東海市を撮るんじゃない! みたいになったら、本当にごめんなさい!」
――お客さんが観終わったあとの感情はどうなりそうですか?
加藤:「まじか! ってなるかもしれません。覚悟して観にきてほしいです。ただ、加藤浩次監督もいらっしゃるので、最終的には中和されると思います。僕の作品だけではなくて、いろんな作品と一緒に上映されるので、MIRRORLIAR FILMSというイベント自体は楽しいです」
――そんな映画『MIRRORLIAR FILMS Season7』を楽しみにしている視聴者の皆さんに、メッセージをお願いします!
加藤:「先に謝っておきます。すみませんでした(笑)。ただ、面白い作品の自信はあるので、ぜひ楽しみにいらしてください!」
MIRRORLIAR FILMSとは?
クリエイターの育成発掘を目的にした短編映画制作プロジェクト。2021~2022年には「変化」をテーマにしたSeason1~4の作品が公開されました。Season5~8は「企業版ふるさと納税」の制度を活用した、地域振興事業・教育事業の一環で取り組む参加型プロジェクトになっています。参加者の中には竹中直人さんや浅野忠信さん、小栗旬さんといった豪華俳優陣も名を連ねます。
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