「なぜ桐島は最期に名乗ったのか」 指名手配犯を演じた俳優が語る桐島聡の人物像

映画情報

  • (右から)俳優の毎熊克哉さん、テレビ愛知アナウンサーの相澤伸郎

    (右から)俳優の毎熊克哉さん、テレビ愛知アナウンサーの相澤伸郎

1970年代に起きた連続企業爆破事件の指名手配犯で、約半世紀におよぶ逃亡生活の末、2024年1月、末期がんに倒れ、病院で素性を明かした3日後に他界した桐島聡。黒縁メガネをかけて微笑んでいる指名手配ポスターの写真を記憶している方は多いと思います。その数奇な人生を描いた映画『「桐島です」』が7月4日(金)に、新宿武蔵野館ほかにて全国公開されます。

桐島聡役を演じた毎熊克哉さんに、本作に対する思いを伺いました。

どうやって役を準備していけばいいのか…

――この役のオファーを受けたときはどう思われましたか?

毎熊克哉さん(以下、敬称略):「ニュースを見たときには『捕まったんだ』というよりは『あ、生きていたんだ』というのが率直な感想でした。それから数カ月たって台本が届いて……。まさか自分に桐島役のオファーがくるとは想像していなかったのでビックリしたんですけど、高橋伴明監督の作品ということでお引き受けしました。

つい最近まで実在していた人物でありながら人物像があまりわからない。どうやって役を準備していけばいいのか最初は想像がつかなくて、いろいろ大変そうだなとは思いました」

――桐島聡のイメージをつかむためにしたことは?

毎熊:「まずは、連続企業爆破事件の概要を調べることにしたのですが、そこにはあまり『桐島』って名前が出てこなくて。ほかにいろいろと調べてみても、影が薄いイメージでメインキャラクターになるような人間ではなかったんだなと感じました。

演じるうえで一番手がかりになったのは、残っていた2、3枚の写真と短い動画、あとは台本です。台本には映画の中でのフィクションの部分もちょこちょこ入っているので、フィクションの役を演じる感覚半分で役をとらえていきました」

――よく知られている手配書の写真、ちょっと笑顔の写真でしたよね。どんな印象を受けましたか?

毎熊:「特別これといって強い主義主張をもっているわけでもありません。いわゆる“普通の学生”という印象があります。生活の中で普通にみんな笑うことがあるじゃないですか。あの写真も、普通に過ごしていた一瞬を切り取ったものなんじゃないかと。特別優しいわけでもなく、特別正義感があるわけでもなく、一番イメージしたのは“普通”ですね。

なぜそんなに長い間捕まらなかったのかなっていうのがまず疑問としてあったんですけど、普通だったからなんじゃないかなって気がするんですよね。妙に優しすぎたりとか、コソコソしていたりとかしていたら、たぶん違和感あるじゃないですか。あまりにも普通過ぎたから誰も疑わなかったんじゃないかなって想像しました。

「なぜ名乗った?」観客も考えを巡らせられる作品に

――どうして桐島は最期に「桐島です」と名乗ったと思いますか?

毎熊:「名乗るシーンの撮影は、全体スケジュールの最後だったので、『どうしてだろうな?』とずっと考えながらの日々でした。すごく悩んだのですが、撮影終盤になってくるといろいろと思いがありすぎて、1つにまとまらなかったんですね。結果的には、この映画を観るお客さんも『なぜ?』って考えてくれるようなニュアンスにしたいと思いました。

名乗った理由なんて、結局のところ誰にもわかりません。それを演じ手が何か1つの思いを言葉に乗せるというのは、違うかなと思います。

いっぱい思いがあったからこそ、ただ訊かれたから本名を名乗った、っていう流れが一番しっくりときました。よりシンプルな形で演じて、あとはもう観たお客さんに『なんでだったんだろうな』って思ってもらえたらいいなと。お客さんも、20代の桐島からずっと共に追いかけて観てくれているわけなので、限定的なお芝居にしないほうが豊かだし、より多くの感情を受け取ってくれるだろうなと思っています」

映画『「桐島です」』は7月4日(金)、新宿武蔵野館ほかにて全国公開されます。

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