不良品じゃない!「石川メリヤス」が生んだ"指の長さが異なる手袋"

工場へ行こう III AMAZING FACTORY

  • "異色の手袋"が大ヒット!

1962年の創業以来、手袋をはじめとした2000種類以上の布製品を手掛けている「石川メリヤス」(愛知・西尾市)。島精機製作所製の編み機を約150台保有し、多種多様なニット製造に対応している。今回は、会社を支える社員たちの“アイデア力”と“ヒット商品の開発秘話”に迫る。

3代続く老舗 会社を支えたアイデア力

1960年代、愛知・西尾市をはじめとする西三河エリアは、軍手の一大産地だった。
多い時は300ものメーカーがあったそうだが、海外勢に押され、現在残っているのはわずか3社。なぜ「石川メリヤス」は生き残ることができたのか。3代目の大宮裕美社長は「創業者である祖父と2代目の父が“新しいモノをどんどん取り入れよう”という性格の人だった。それが大きかった」と話す。

  • 『伸び伸び手袋』

「石川メリヤス」最大の強みはアイデア力で、これまで、大ヒット商品をいくつも生み出してきた。
「初代(石川 進さん)が、ポリウレタンという伸び縮みする繊維を芯に入れて、アクリルで包むような糸を開発した。その糸で作った手袋がすごく伸びる。「伸び伸び手袋」「マジック手袋」として大ヒットした。“世にないものを作る”ということでやったのが40年前のこの開発だが、簡単ではなかったと思う」(大宮社長)。

  • 「ラブヒール」

大宮社長の父で、2代目・石川君夫さんの時は、足が温まる靴下「ラブヒール」を開発。通常より厚手で、冷え性対策ができるとヒット商品に。さらに、かかとの部分に特殊なシートを縫い付け、保湿効果も期待できるこの靴下は、年間100万足売った実績も。
大宮社長は、「素材開発を応用し、機能面を強化したのが父の功績」と話す。

驚きのアイデア!魚をさばくための手袋

  • 新商品案と試作品

アイデアで勝負してきた先代の意思は、現在も受け継がれている。大宮社長が「ぜひ見てほしい」と持ってきた段ボール箱の中には、社員が考えた新商品案と試作品が大切に保管されていた。

  • ギターの練習ができる手袋

こちらは指先だけが厚くなっており、指を保護しながらギターの練習ができる手袋。しかし、「ハサミを17カ所に入れて仕上げるため、手間がかかって仕事にならない」(大宮社長)ということで、残念ながら不採用に。

  • 魚をさばくための手袋

もちろん、こうしたさまざまなアイデアを出し合うことで、ユニークな商品も生まれている。1カ月前に発売されたこちらの手袋は、実際に「海鮮料理 マルトラ別館」(愛知・西尾市)で使われている。魚をさばくための手袋で、通常の軍手よりも厚手。トゲのあるカサゴのような魚をつかんでも痛みが少ないそうだ。

考案者は社長の夫・大宮冬洋さんで、「魚をさばくのが趣味なので作りたいと思った。糸が丈夫なので出刃包丁が当たっても切れない。ヌメヌメしている魚でも手袋がザラザラしているのでつかみやすい。試作して2年前から使っているので、社長が『商品化してみる?』と言ってくれた」と、開発秘話を明かす。

  • 「仕事の効率が2〜3割上がった」(石川さん)

実際に使っている「海鮮料理 マルトラ別館」の板前・石川圭一さんは、「強めに握ると、今までチクっとしていたような所でも大丈夫。仕事の効率が2〜3割上がった」と話す。

指の長さが違う手袋…何に使う?

  • 車のホイールを磨くための手袋

続いてのユニーク商品は、薬指と小指が長い手袋。一見、不良品のように見えるが、実は車のホイールを磨くためのもので、長い指の先を握って使う。

 

考案した浅井雄三さんは、「元々車が好きで、よく洗車をしていた。隙間を指先で擦っていると痛くなるので、それをどうにかしたいと思った。余っている部分で擦れば指が痛くないし、クッションみたいな感じ」と話す。
タオルが入らない隙間を掃除することができ、汚れが落ちやすい素材なので繰り返し使える。車好きのニーズをとらえ、これまで約1000枚販売した。

 

「石川メリヤス」の主力商品は工場用の軍手だが、その9割は他社からの依頼を受けて作るOEM商品だ。複雑なオーダーをより簡単に実現するため、コンピューター制御で軍手を作るハイテクマシーンを導入している。

 

  • 地下足袋メーカーから依頼されたニットシューズ

作りたい手袋のデータを読み込めば、どんな複雑な構造でも作れるそう。岡山の地下足袋メーカーから依頼されたニットシューズも、この機械で作っている。編み方が複雑なため、何度も試作を繰り返して完成した商品だ。

 

  • 工場長の磯村さん

高い技術力を誇る「石川メリヤス」。そこで取材班は工場長の磯村さんに番組のロゴを渡し、オリジナル手袋を作ってもらうことに。磯村さんは「大丈夫ですよ!」と快諾。ロゴのデータをもとにデザインを組み、2時間後にはマシンが動き出した。

こちらが、番組のロゴをあしらったオリジナル手袋。実に見事な仕上がりだ。

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