急須に残る最後の1滴を絞り出せ!【プロ直伝】おいしいお茶のいれ方

工場へ行こう III AMAZING FACTORY

青空に映える広大な緑の茶畑…新茶シーズン真っただ中! 今回は、お茶王国・静岡県に飛び、“日本の癒やし”を生む、新茶づくりに密着。摘み立ての茶葉はどうやって商品になるのか。その製造工程は、豪快かつ繊細だった――。

新茶のうま味を追求する「丸東製茶」の職人技

  • 「丸東製茶」(静岡県島田市)の工場

舞台は静岡・牧之原台地。お茶どころ・静岡の中でも生産量の約5割を占める一大産地だ。取材班は、お茶の収穫、加工、販売のすべてを自社で行う、県内最大規模のお茶メーカー「丸東製茶」(静岡県島田市)の工場へ。

  • 乗用摘採機

初夏の茶畑では、新芽の刈り取りが行われていた。刈り取りをするのは、コンテナ式の乗用摘採機。

  • ギザギザの二枚刃で伸びた新芽の部分だけをカット

苗木の列に沿ってゆっくりと進み、ギザギザの二枚刃で伸びた新芽の部分だけをカットする。
この新芽を収穫したものがその年の新茶となり、収穫できるのは初夏の2週間ほど。そのため希少価値が高くなる。「(新芽は)冬に養分をたくわえて春に出てくるため、うま味と甘味が強い茶葉になる」(生産部・藤澤さん)。

収穫した茶葉は、すぐさま工場へ。工場には自社農場だけでなく、近隣の農家約30軒から次々と茶葉が運ばれてくる。多い日だと、1日に集まる量は約45トンにも。

大量の茶葉はベルトコンベヤーで屋内の専用コンテナに移され、品質を保つため、冷却装置によって適切な温度に保たれる。デリケートな茶葉にとって、暑さは天敵。茶葉はその日のうちに全て加工される。

  • 茶葉を蒸し、発酵を止める

続いて茶葉が向かったのは、水蒸気が上がるエリアだ。ここで茶葉を蒸し、発酵を止める。
実は日本茶もウーロン茶も紅茶も、元は同じ茶葉。あえて発酵させるウーロン茶や紅茶と違い、日本茶は刈り取り後、すぐに蒸して発酵を止めることで、鮮やかな緑色とさっぱりとした味わいを保つことができる。

  • 「丸東製茶」工場長の仲山さん

この道30年超えのスペシャリスト「丸東製茶」工場長の仲山さんは、茶葉を触りながら、香り・形状・柔らかさをチェックする。「蒸しは一番重要。95%は蒸しで決まる」(仲山さん)。

  • 機械の中で茶葉が乱舞

厳しいチェックをくぐり抜けた茶葉は、「葉打機」で予乾燥。機械の中では、茶葉が乱舞していた。「ここでお茶を冷やしてしまうと(茶葉の)中から水分が出なくなる」(仲山さん)。
全体をかき混ぜながら、約100℃の熱風を吹き付けて水分を飛ばしていく。「(水分を)一気に飛ばすと、うま味や苦みがすぐ抜けてしまうので、ゆっくりゆっくり時間をかけてうま味を凝縮させていくことが重要」(仲山さん)。
生の茶葉の水分量は約80%で、5%以下になるまでじっくり乾燥させることで、うま味や甘みが感じられるおいしいお茶になる。予乾燥を経て、水分量は約50%に。

 

 

  • 見た目や香り、味をチェック

ここで仲山さんは茶葉をひとつかみし、湯呑みに入れてお湯を注ぎ、見た目や香り、味をチェック。これを1日40回行う。

妥協なき乾燥工程 日本茶の「顔」を磨く最強マシン

  • 茶葉をもみ込む「揉捻」

茶葉は妥協なき乾燥の旅へ。このマシンで行うのは、茶葉をもみ込む「揉捻」という作業。加熱せず、圧力をかけて茎などの硬い部分から水分をもみ出す。この工程で、水分量は約30%に。

さらに、ドラム式乾燥機と同じ原理のマシンで、茶葉をほぐしながら熱風をあてる。

  • もみながら水分を蒸発させる「精揉」

お次は、熱い鉄板の上を重しが何度も往復することで、もみながら水分を蒸発させる「精揉」。これは日本茶ならではの作業で、「茶葉を真っすぐキレイにする作業。お茶の顔を“いい顔”にする。顔まで仕上げるのは日本だけだと思う」(仲山さん)。

そしてもう一度、熱風を送りながら茶葉を乾燥すること約30分…水分量は7%以下に。

最後はマイクロ波で茶葉の中心部まで加熱し、遠赤外線で焙煎し、独特の香ばしさを引き出す。香りをチェックし、加熱の温度や時間を微調整して仕上げ、ようやく長い工程が終了!
手間暇かけて仕上げた新茶…この一杯に職人さんのこだわりが詰まっている。

プロ直伝!おいしいお茶の入れ方

ここで、小売部門の法月さんに、プロ直伝のおいしいお茶の入れ方を教えてもらった。
まずは急須ではなく、湯呑みにお湯を入れて80℃まで冷ます。急須に好みの量の茶葉と、適温(80℃)になったお湯を入れて30〜40秒蒸らす。ポイントは、急須を揺らさないこと。
「茶葉はねじれている。ゆっくり開かせると、苦味・渋みが出過ぎない」(法月さん)。
2つの湯呑みに注ぐ場合は、交互に注いでお茶の濃さが同じになるように。最後は一番、うま味と甘みが強く出るので、しっかりと絞るように注ぐのがコツだという。

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