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ドクターイエロー
「見たら幸せになれる」と言われ、多くの鉄道ファンに愛される人気車両「ドクターイエロー」(JR東海)が、2025年1月29日、惜しまれつつも引退。職務を終えたドクターイエローには、“第二の人生”が待っていた。
今回は、引退後のドクターイエローに130日密着。塗装作業から陸上輸送の様子まで、2度と見られない貴重な姿を紹介する。
ドクターイエロー、最後の「お色直し」
ドクターイエローの引退から約1カ月たった2月20日。静岡・浜松市内にある踏切に、人だかりができていた。実はここ、“新幹線が通る唯一の踏切”として鉄道ファンに人気の場所で、ドクターイエローの本当のラストランが見られるという。
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「リニア・鉄道館」で展示
引退したドクターイエローは、約1カ月間「JR東海 大井車両基地」(東京・品川区)にいたが、「リニア・鉄道館」(名古屋市港区)で展示されることになり、この日、再び線路を走って「JR東海 浜松工場」へ。“最後のお色直し”をするためにやって来たのだ。
ドクターイエローは10日に1回程度、線路や架線の状態を検査するのが仕事で、JR東海とJR西日本で1台ずつ所有している。
引退したのは、2001年に誕生したJR東海のドクターイエロー。今後、線路を検査する機能は営業車両に組み込まれるため、JR東海にとっては最後のドクターイエローとなる。
そこで、展示される7号車が、浜松工場で24年前とほぼ同じ姿によみがえることに。
残りの車両は再生アルミとして活用される他、ドクターイエローの欠片が入ったお守り(※現在は販売終了)など、グッズにも使用されている。
まずは7号車のボディーをピカピカに塗り直す。仕上がりを正確に確認するため、照明が均一にあたる塗装室へ。
いよいよ塗装開始! 上下に動くアームの先端から黄色い塗料が噴射され、車体の後方から前方へ…少しずつ塗装していく。ドクターイエローは夜でも目立つように、「フレッシュイエロー」という色が使われている。
約30分後、塗装を終えたドクターイエローは、ピカピカと輝くボディーに!
その違いは一目瞭然だが、よく見ると、先頭部分が塗装されていなかった。実は塗装マシンは最新の新幹線の形に合わせてプログラミングされているため、旧式のドクターイエローの先頭部分には対応していない。“顔”の形が違うため、手作業で塗装する必要があるのだ。
そこでボディーをしっかりと覆い、再び塗装室へ。作業員が先頭部分をスプレーガンで丁寧に塗っていく。「先頭部分は曲面が多く、複雑な形。塗料がムラにならないように注意した」(JR東海 浜松工場 野中さん)。
塗料が溜まりやすい凹みに気をつけ、角度を調整しながらスプレーガンで吹き付けていく。ポイントは重ね塗りで、数回に分けて塗装することでムラをなくすのだ。
丁寧に、約1時間かけて塗装が完了。その後はゆっくり時間をかけて乾燥させる。
5月21日。取材班が再び浜松工場へ向かうと、そこにはよみがえったドクターイエローの姿が!
24年前の輝きを取り戻したこの姿で、第二の人生を歩む。
ドクターイエローを陸上輸送!最後はファンの手で…
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トラックで陸上輸送
ここからは、展示に向けた最終準備に入る。ドクターイエローをブルーシートで覆い、トラックで「リニア・鉄道館」まで陸上輸送するのだ。ドクターイエローはもう線路を走ることができないため、一般道を通って運ばなければならない。
120km以上と走行距離が長いため、初日は浜松工場から愛知・豊橋市にある港まで運び、2日かけて「リニア・鉄道館」に到着した。
輸送大作戦の2日後となる6月5日。「リニア・鉄道館」を訪れると、なんと、ドクターイエローが2両並んでいる。
輸送したドクターイエローの隣にいたのは、1979年~2005年まで運行していたT3編成。今まで「リニア・鉄道館」に展示されていたが、新しくやって来たT4編成のドクターイエローと入れ替えることに。まさに奇跡の2ショットだ。
ドクターイエローを展示室に運び込む前に、輸送用の台車を外し、展示用の台車に付け替える。空を舞うドクターイエローの姿は圧巻! これで準備万端だ。
そして迎えた6月7日。いよいよ車両を展示室へと運び込む。
この日、抽選で選ばれた40名のドクターイエローファンが集結。黄色い手袋を着用したファンが、愛と感謝の気持ちを込めて、手押しで展示スペースまで移動させた。
24年間、新幹線の運行を支え続けてきたドクターイエロー。ここから“第二の人生”が始まる。
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